今年も、新設された社会人野球チームが熱い。昨年は、創部2年目のハナマウイが都市対抗に出場し存在感を見せた。

昨年、埼玉に誕生したのがテイ・エステック。自動車のシートなど内装品を製造するメーカーが、会社の結束力を高め、まとめる役割を果たす象徴として野球部を創設。6月の都市対抗1次予選となる県内企業リーグ戦に初出場する。目標は「創部5年で都市対抗出場と勝利」だが、成立学園(東京)で監督を務めていた菅沢剛監督は「やるからには、初年度から都市対抗出場を狙う。競ったゲームができるチームにしたい」と話す。

昨年まで、わずか6人で練習を重ねた。会社の敷地にある広場に、仕事を終えて毎日集まった。アンツーカーほどの距離で、全員がキャッチボールをするのが精いっぱいの広さ。工夫して打撃練習も行い、退社が午後10時を過ぎることも。厳しい環境だったが、村上友幸投手(22=東海大)は弟であるヤクルト村上宗隆内野手(20)の姿が糧となった。結果をチェックし「活躍を見ると、負けていられないと思った。もちろん応援もしているけど、自分も頑張らないとと思えた」。弟から贈られたグローブを使い、キャッチボールをする投手陣の中でひときわ目立つ193センチ、104キロの体格。工場の生産ラインを管理する製造部で働く。先輩社員から「応援しているから、頑張って」と声を掛けられるようになった。「応援してくれる人がたくさんいるので、しんどいことが多くても頑張れる。大学では1度も勝てなかったので、社会人で勝ちたい。とにかく負けたくない」と意気込む。

今まであって当然だったボールなどの道具や練習環境も、当たり前ではない。50メートル5秒7と俊足の久保竣亮外野手(23=上武大)は「初めて球場で練習できたとき、感動しました」と振り返る。今月からは大卒の新人選手も合流し、チームとしての第1歩を踏み出した。全員そろえば21人となる。横浜や西武で活躍した友利結氏を父に持つ友利アレン投手(22=東北福祉大)は「少人数になって、声出しなども重要になる。自覚を持って頑張りたい」と話した。

元ヤクルト投手コーチで、BC・富山前監督の田畑一也氏が今年からコーチに就任。「新しいチームの初期メンバーとして、みんなで作り上げていくのは楽しい」と笑顔だった。最近は、週末の練習を見学に訪れる社員も。選手、チームが成長する姿は、きっと届くはずだ。【保坂恭子】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

笑顔で指導するテイ・エステック田畑一也コーチ(2021年1月18日撮影)
笑顔で指導するテイ・エステック田畑一也コーチ(2021年1月18日撮影)
ヤクルト村上の兄テイ・エステック村上友幸投手(2021年1月18日撮影)
ヤクルト村上の兄テイ・エステック村上友幸投手(2021年1月18日撮影)
デニー友利氏の息子テイ・エステック友利アレン投手(2021年1月18日撮影)
デニー友利氏の息子テイ・エステック友利アレン投手(2021年1月18日撮影)
俊足の外野手として期待されるテイ・エステック久保選手(2021年1月18日撮影)
俊足の外野手として期待されるテイ・エステック久保選手(2021年1月18日撮影)