今春センバツ準優勝の智弁和歌山に“日本一”を目指すべく、「あの夏世代」の新任コーチが加わった。
「日本一になれる、日本一を知っているチームでやりたいと思って来ました」。昨年度まで学生コーチを務めた国学院大を卒業した原田(はらた)夏希コーチ(22)は今春、学校職員として春夏4度日本一を飾った野球部の指導に励む。中京大中京時代は高橋宏斗(現中日)、中山礼都(現巨人)らと19年秋の神宮大会優勝に貢献。20年春、新型コロナウイルスの流行で、出場予定のセンバツは中止に。20年夏に交流試合で聖地の土は踏んだが、2季連続甲子園大会は中止。「あの夏世代」とも呼ばれる年代だ。今年、春を待つ前に、一足早く同校に合流しセンバツに同行し、夢の舞台にたどり着いた。
「高校生じゃなくても甲子園は憧れの場所です」。センバツ中止が、将来の夢をより強めた。「甲子園に指導者として勝ちたい思いが強まりました」。
同校の選手たちは当初のイメージとはかなり違った。「選手は『野球のエリートとして注目される選手たちの集団』と思っていましたが、『上達したい思いが強い子』が多いです。必死で、かっこつけてやらないところがあります」。中谷仁監督(46)が示す、勝つために1人1人が目の前の課題をこなしていく選手像をナインは体現していた。
同コーチと3年生たちとの年齢差は例えれば、小学校1年生と6年生ほど。ナインからは合流後すぐ、悩みを打ち明けられ、早く上達したい部員たちに“お兄さん”のような距離で打ち解けた。
平日1、2時間の自主練習を設ける同校。各選手から指導をお願いされることが多い。春から人生初の三塁に挑戦した奥雄大外野手(3年)と毎晩、守備練習を行った。「どれだけ忙しくても、僕へゴロ捕をしてくれて、守備のことを教えてくれる。原田先生のためにプレーしようと思います」と恩人だ。
「塩(健一郎部長)先生も自分も『野球のうまい・下手』『結果が出る・出ない』より、どう取り組み、どんな思いで向かうかを重視します。『うまくなって勝ちたい』気持ちが集まらないと勝てないですよね」。常勝軍団かつ、少数精鋭の部員数。技術のほか、視野の広さも求められる。「常に『全員に役割がある』と伝えています」。
「1人の高校生として、日本一の存在になってほしい」。寮に住み込み、部員と寝食をともにする今、願うことは1つ。「『全国制覇』という言葉もありますが、部員がいつか野球人生を終えても、人間として『日本一』にふさわしい存在になってほしいです」。若き指導者の、試行錯誤の日々が始まった。【中島麗】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)






