日本シリーズ4連覇のソフトバンクを圧倒しての先勝だ。ベストメンバーを組めず不調とはいえ、そこは常勝軍団。強敵を本拠地に迎え、しっかりと戦えたのは“秋の大舞台”に期待が持てる…というのは気が早すぎるけれど。

いいなと感じたのは2回表だ。1回裏に2点を先制したが先発・青柳晃洋が安打、四球で無死一、二塁のピンチを迎えた。ここで内野陣がマウンドに集まる。主に言葉を発していたのは梅野隆太郎、そして北條史也のように見えた。

広島3連覇監督の緒方孝市(日刊スポーツ評論家)は交流戦前に大山悠輔が復帰するなら「4番三塁で」と話していた。理由の1つは「ピンチで投手に声を掛けるのはルーキー佐藤輝明が三塁では難しい」という視点である。

その考えでいけば大山以上に適役なのは北條ではないか。この日の内野陣で唯一の大阪人。ヒーローインタビューなどでスベり気味ながらも笑いを取ろうとする明るい性格だ。

もちろん自身が不調ならなかなかそんな余裕もないだろうが現在は打撃が絶好調。この日も先制打を放つなど乗っていた。普段からベンチで声も出しており、ムードメーカーだ。その2回表、青柳が後続を抑えて最終的に勝利投手になったのも、あの“ミーティング”が奏功したと思う。

「走者をかえしてくれるしチャンスメークもするし、よく働いてくれている」。指揮官・矢野燿大も北條を褒めた。勝手な見方だが同じ大阪人として北條のノリが分かるだけにうれしいのかもしれない。

さらにこのミーティングメンバーは年齢が近い。青柳が27歳、北條と大山は1つ学年が下の26歳だ。中野拓夢は24歳。梅野隆太郎が一番のお兄さんで、それでも29歳だ。会社で言えば仕事を覚えてきたイキのいい若手の集まりという感じか。そこにやはり北條、大山と同学年・藤浪晋太郎が最後のピースとして参加した。中継ぎ起用は本意ではないだろうが勝利に貢献できたのは現在の阪神としてなかなかの“完成形”だったのではないか。

残念だったのはマルテが8回の遊ゴロで本気で走らず、今宮健太がはじいているのにアウトになった点だ。全力疾走は矢野野球の原点。疲労もあるだろうがマルテもまだ29歳。若いチームの一員として試合に出るなら必死でプレーしなければ外されるのは自明の理だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)