巨人・中田翔が子どもの頃からずぶとかった? エピソードとして知られるのは広島の現役バリバリ選手の自宅までサインをもらいに行ったことだ。広島3連覇監督で現在、日刊スポーツ評論家の緒方孝市である。

広島の野球少年だった中田はたまたま緒方の自宅が近所であることを知り、友人と2人連れでマンションのチャイムを鳴らしたという。在宅していた緒方は部屋まで上げ、快くサインをした。それにしても選手の自宅にまで行くのはなかなか大胆なことだ。

「まあね。東京とかとは違いますからね。でもめずらしいかな。そんな子どもは他にあんまりおらんわね」。当時のことを笑いながら、緒方はそう話す。

その中田、日本ハムからの巨人移籍に関しては批判も多い。ここではそれは置いておいて、なぜ巨人が獲得したか、ということを考える。中田という選手をこの“事件”でつぶしてしまっては球界として惜しいという部分はあるだろう。同時にそんな“きれいごと”だけでなく「逆転優勝へのきっかけに」という思いも当然、あるはずだ。

勝負の9月である。優勝するために必要なことは何か。緒方はよくこんなことを言っていた。「投手でも野手でも誰かラッキーボーイみたいな存在が出てくることでしょうね」。昔からよく聞く話でもある。

名将・原辰徳が中田に期待しているのも“それ”ではないかと勝手に思っている。中田の思わぬ出来事を、もうひと息で追い越せなかった阪神を倒すきっかけにしようと思っていたのではないか。それならば。阪神がやらなければならないことはハッキリしている。中田を抑え込むことだ。

繰り返すが勝負の9月だ。今月は巨人と7試合が予定されている。甲子園で4試合、東京ドームで3試合だ。誰が考えても、直接対決7試合の意味合いはとてつもなく大きい。ズバリ7つ勝てば阪神は優勝できる。7つ負ければ、もちろんダメだ。当然だろう。

まさにこの7試合は日本シリーズ級の集中力が必要だと思う。やらなければならないことは多いが、まずは「打倒中田」だろう。中田を抑えて他に打たれていいはずはないが、中田が打つことでチームを勢いに乗せないためにも、ここは厳しく攻めなければならない。阪神投手陣はその覚悟を持って戦いに臨んでほしいと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)