「また駄文を書いてしもた」と恐縮しつつ続けているこんなコラムでも愛読していただいている読者がいるようだ。日刊スポーツのウェブから外部に転載されるサイトでは、いわゆる“書き込み”でいろいろな意見があって面白い。

従来のスタイルで会社に手紙をいただくこともある。多くが人生の大先輩である高齢の方だ。コロナ禍もあって、ほとんど出社しないので失礼ながら読むのは遅れ気味。先月23日に書かれたという手紙が最近、手元に届いた。

「4番打者に重要なのは本塁打ではなく打点でしょう。塁上の走者を確実にかえして得点できる打者が4番のはず。阪神でいま、そこに適任なのは…」

熱心に書かれているその名前は近本光司だった。開幕直後は不振だったがシーズンが進むごとに調子を上げ、現在は首位打者を争うまでになっている。なにより安打数「161」はリーグ最多。得点圏打率は2割9分7厘ある。

「いま阪神で誰が打つねん」。シンプルに考えて近本の名前が出るのは実はおかしくないかもしれない。とはいえ、この読者もその場合、チャンスメークはどうなる…という懸念も書かれている。

ここに来てオーダーが固まらないという話だ。この日、ロハスが昇格してきた。抹消されたときに「今季はこれで最終形」と書いたが、この土壇場で不振のサンズと入れ替わるとは。指揮官・矢野燿大もいよいよ我慢ができなかったということだろう。

「ここまで来たらジタバタするな。頑張ってきたメンバーでやらんかい。佐藤輝明かってスタメンでつこたらええねん」。虎党ならそう言いたい気持ちもあるかもしれない。正直、こちらもそう思う。

だけど戦っている当事者にすればそうはいかない。指揮官・矢野燿大にすればそれこそ眠れないほど考えての結論だろう。ここでロハスに期待するのか…とは思うけれど、動かないわけにはいかなかったのだ。

「サンズが落ちるの?」と焦ったマルテが先制3ランを放ったわけではないだろうが外国人の競争も最初からの話ではある。先発・高橋遥人が抜群の投球だったが得点は1回のこれだけ。安定した戦いではないがもう仕方がない。ほとんどの主力は疲労困憊(こんぱい)だろう。残り18試合。最後の気力と体力を振り絞って戦うしかない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)