「絶対、オレで止めたると思って」-。ヒーローインタビューで胸を張る才木浩人の関西弁が心地よかった。気が早い、早過ぎるけれど、もしも阪神がリーグ連覇に成功した暁にはMVPは才木浩人だろう。
もちろん、これから何がどうなるかは分からない。しかし現時点では間違いなくそうだ。これほどにブルペンを使わず、連敗を止めてくれる投手がいまの球界にどれだけいるか。どれだけ褒めても足りない。
5月12日のDeNA戦(横浜)に次いで今季2度目の1-0完封。敵地でそれをシーズン2度も達成したのは阪神投手では69年の江夏豊以来だという。そんなレジェンドの名前が出てくるほどの偉業だ。
そこで思い出すのは以前に江夏から聞いた古い時代の話である。大院大高のエースになっていたころ。味方野手が失策するとロージンバッグをマウンドにたたきつけ、けっ飛ばしたり。江夏はそんな行動を取っていたという。
「ある試合中に(塩釜強)監督が飛んできて、はり倒された。そして諭されたわ。野球にエラーはつきもの。それにロージンは味方や、グラブとロージンは投手にとって最後の味方なんや、と言われた。それをしっかり染み込まされた。だからオレはプロでも野手のエラーに怒ったことはないと思うぞ」
この試合、腰を抜かしそうになったのは1回裏だった。森下翔太の先頭打者弾で首尾よく先制した直後。才木は簡単に2死を取った。だが3番・高部瑛斗には左前打を許す。それはいいのだが、この打球を左翼スタメンのミエセスがあっさり後逸するではないか。高部はそのまま三塁へ。いきなり2死三塁、同点のピンチになった。
連敗の流れを考えれば動揺しておかしくない場面だったはず。同点になっても仕方ないかなと思ったが才木は微動だにせず、こわいソトを空振り三振に切った。そこで江夏の話を思い出し「たいしたもんや」…と思ったのである。
「もうエエわ」「もうエエやろ」と千葉で2試合、ひと言だった指揮官・岡田彰布、この日は「才木に聞いたれ(笑)。オレはもうエエやろ」。まあ、もう少し話をしたけれども。
打線が苦しいのは相変わらずだ。打率2割を切った大山悠輔の状態は厳しい。それでも連敗ストップで流れを変え、甲子園で「六甲おろし」を期待したい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




