北海道勢初の紫紺の大旗取りへ、あと1勝だ。14年ぶり6度目出場の東海大四(北海道)が、浦和学院(埼玉)に逆転勝ちし、春夏通じて初の決勝進出を決めた。北海道勢の春の決勝進出は、63年準優勝の北海以来52年ぶり2度目。エース大沢志意也(3年)が被安打9も要所を締め、1失点完投。攻撃でも3安打2打点と投打に活躍し、昨秋の明治神宮大会で完敗した相手に雪辱した。

 もう、怖さはなかった。9回2死一、二塁。点差は、2点。東海大四の大沢は、マウンドで2度屈伸すると、軽く跳ねた。「負けられないと思ったら、緊張して足が硬くなってしまった」。こん身の112球目。変化球で最後の打者を中飛に打ち取ると、いつものポーカーフェースが笑顔に変わった。

 「バックを信じて投げた。今まで浦学さんを倒すために頑張ってきて、このような結果が出て良かった。怖さはなかったし、しっかり自信を持って投げられた」。

 1回戦からの全4試合に登板し、3度目の完投。昨秋の明治神宮大会で14安打10失点で大敗した相手に、甲子園で雪辱した。2回に3連続長短打で1点を許すなど序盤は劣勢だったが、自らの中前適時打などで逆転した直後の3回1死二塁のピンチを併殺で脱すると、4回以降は三塁を踏ませない。6回には追加点のセーフティースクイズを決めるなど、3安打2打点で投打の主役になった。

 執念が、実った。全員が、寮の部屋に、0-10で6回コールド負けした浦和学院戦のイニングスコアを貼っている。冬場、薄暗く、狭い室内練習場で行う基礎練習や体力づくりに耐えることが出来たのは「打倒、浦学」の思いがあったから。悔しい思いを糧に走り込んだ下半身は、ひと回り大きくなり、生命線の外角低めへの制球力は増した。大脇英徳監督(39)は「堂々とマウンドに立って、相手に向かっていく姿を見て感動した」と成長に目を細めた。

 昨秋の全道大会から、下馬評を覆してきたチームは、ついに甲子園決勝の舞台へたどり着いた。北海道勢初のセンバツ優勝まで、あと1勝。「ここまで来たんだから、負けないで、笑って終われるように。日本一になって北海道へ帰りたい」。痩身(そうしん)のエースが、快挙達成への道を切り開く。【中島宙恵】

 ◆本塁打0で決勝 東海大四はここまで本塁打なし。1発を打たずに決勝進出は07年の常葉学園菊川と大垣日大以来。

 ◆春初Vへ センバツで優勝経験がない都道府県同士の決勝は09年の清峰(長崎)-花巻東(岩手)以来6年ぶり。

 ◆春最北端Vへ 東海大四が決勝で勝てば、センバツ最北端Vとなる。これまでの春の最北端Vは62年作新学院(栃木)。