仲間のため、家族のために、エースが感謝の復活完投だ。10年連続南北海道大会出場中の函館大有斗・藤本竜大(りゅうだい)投手(3年)が、8安打を浴びながら1失点。「球に切れがなくて最高に調子が悪かったけれど、野手を信じて投げた」。粘りの投球でマウンドを守った。

 昨夏から背番号1も、昨冬から原因不明の右肘痛に悩まされ、今春はベンチを外れた。チームも6季連続の道大会出場を逃し「責任を感じた」。痛みの原因が分からず不安に襲われる中、函館市内で鍼灸(しんきゅう)院を営む父泰司(ひろし)さん(48)が、毎日のようにはりを打って支えてくれた。前日21日は父の日で、この日の復活白星は、最高の恩返しとなった。

 連打を浴びた9回は無死一、二塁から左前打を打たれたものの、世良田大輔左翼手(2年)の本塁へのレーザービームで窮地を脱した。バットでも同点打に勝ち越し打と4安打2打点で先輩を助けた世良田は「竜大さんの元気で成り立っているチーム。力で押していくので、それが守備にも伝わってくる」。函館の雄に戻ったエース。最後の夏は、まだ序章にすぎない。【中島宙恵】