強肩強打の高校NO・1捕手は、ドラフト1位間違いなし!? 広陵(広島)の3番中村奨成(しょうせい)捕手(3年)が、ダメ押し3ランなど3安打の大活躍。優勝候補の秀岳館(熊本)を破る原動力となり、16強進出を決めた。2戦3発の量産で、2試合連続視察した巨人やオリックスのスカウトもますます高評価だ。早実・清宮不在の今大会、広陵OBで巨人の小林2世と評判の18歳が、プロの注目を独占している。

 中村は堂々とダイヤモンドを回った。2点リードの9回1死二、三塁。秀岳館の左腕、田浦が投じた直球を一撃で仕留めた。得意の内角高めだった。「感触はバッチリ。打った瞬間、行ったと思った」。打球は大きなアーチを描いて左翼席に突き刺さった。勝負を決めたダメ押し弾。「全く想像してなかった。気持ちよかった」。初の公式戦2戦連続、この夏甲子園3本目の本塁打は会心だった。

 直前の7回2死二、三塁の第4打席は、敬遠気味の四球。それまで3打席2安打と好調だっただけに、もう1本打つぞという思いでいっぱいだった。そして巡ってきた9回の打席。「(敬遠も)頭にあったけど、向かっていった」。鬱憤(うっぷん)をはき出すような1発が生まれた。

 母啓子さん(44)への恩返しを心に秘めている。女手ひとつで育てた啓子さんは、「子どもに野球しかさせたくなかった」という熱烈な広島カープ・ファン。そんな母の影響もあり、小学1年から野球を始めた中村は、すぐのめり込んだ。

 バッティングの参考にしている巨人坂本勇のユニホームなど、自宅の部屋は野球グッズであふれている。小学生のころは啓子さんを相手にキャッチボールを繰り返し、中学時代は時間があれば家の前でバドミントンの羽根を上げてもらい、打撃練習した。幼いころからの鍛錬の成果で、今やエース平元が「バケモノ」と評する選手に成長した。中村は「支えてもらった分、この舞台で恩返ししたい」と感謝の思いを3発の放物線で示した。

 初の甲子園で9打数7安打6打点と大暴れ。中井哲之監督(56)は「たまたまです」と相変わらずの辛口だが、中村も「まだ半分くらい。もっともっとやれる」と貪欲だ。目標は完封勝ちと盗塁阻止率100%と打率10割。もちろん究極目標はチームの日本一だ。中京大中京、秀岳館のV候補を連続撃破した立役者が、さらなる高みを目指して進撃する。【中島万季】

 ◆個人1大会3本塁打以上 広陵・中村が今大会3号。1大会3本塁打以上は今大会の亀岡(済美)に次いで通算27人目(28度目)。捕手の3本は最多で、00年後藤(智弁和歌山)以来17年ぶり5人目。