明豊(大分)の怪物2年生が、超ミラクル劇を完成させた。3番浜田太貴(たいき)外野手が「2試合連発&サヨナラ押し出し四球」で8年ぶりの8強に貢献。9回に3点差を追いつかれ、延長12回に3点を奪われる大ピンチも、その裏に4点を奪う史上初の逆転劇で終止符を打った。

 延長12回2死満塁、フルカウント。奇跡的な逆転サヨナラ劇への1球を、冷静に見極めた。明豊の背番号17の浜田は、ナインが歓喜に包まれる中、淡々と一塁ベースを踏んだ。直前に同点打を放った管が「人生に何度もない、いい場面。心臓がバクバクして押しつぶされそうだった」と声を弾ませる一方、2年生大砲は泰然自若。「勝ちを優先して冷静に見逃せた。もっと3年生と野球がしたい」と、柔らかい笑みをこぼしていた。

 心技ともに卓越していた。3点ビハインドで迎えた絶体絶命の延長12回裏。しかも2死走者なし。そこから、同点に追いつき、さらに満塁で打順が来た。緊張などない。「自分で決めるつもりでした」。打席に入る直前。球審にホームベースを拭いてもらうようにお願いした。「最後になるのでキレイなホームベースにしてほしかった」。土を払ってもらい、しっかりと最後は外角低めを見送った。

 バットも、もちろん卓越していた。3回に右翼線へ先制2点二塁打。「バックスクリーンへの意識でしたが、スライダーだったので少しタイミングを遅らせました」。5回には「自分のスイングができました」と左翼席へ高校通算26号ソロ。初戦でチームに勝利をもたらす逆転2ランに続く2試合連発だ。第4打席では中前打を放ち、初戦から6打数連続安打をマーク。結局、2試合で10打数6安打8打点。6安打中、長打が5本。驚異の長打力に「遊撃手、二塁手の上を越す打球を、常に頭に描いてます」。まさに「顔」で、最後の四球をもぎとった。

 「カッコいいと思うのは日本ハムの大谷選手と中田選手です。特に大谷選手はポイントが近くスイングが速い。意識して練習しています」。1年秋からレギュラー、2年夏の県大会は3番に定着した。川崎絢平監督(35)も「しっかりチームの核になってくれている」と目を細めた。成長途上の浜田が、劇的幕切れを演じた。チーム初の4強へ、さらに劇的なフィナーレと導く。【浦田由紀夫】

 ◆浜田太貴 はまだ・たいき。2000年(平12)9月14日、北九州市出身。小1年からソフトボールを始め、沖田中では中間ボーイズに所属。明豊では1年秋から三塁手で公式戦出場。2年春からは左翼手。それまで下位打線も今夏から3番。高校通算26本塁打(公式戦8本)。遠投100メートル、50メートル走6秒3。両親と姉1人。173センチ、72キロ。右投げ右打ち。

 ◆明豊が延長12回裏、3点差をひっくり返して逆転サヨナラ勝ち。延長戦で一気に3点差以上を逆転勝ちしたのは、春夏の大会を通じ史上初めてとなった。これまで3点差以上の逆転サヨナラ勝ちは9度あり、4点差が3度(春1、夏2)、3点差が6度(春4、夏2)で、いずれも9回までの試合だった。

 土壇場2死無走者からの3点差逆転サヨナラは90年山陽(対葛生)以来。3点差以上逆転サヨナラが押し出し四球で決着した例では、06年夏の智弁和歌山13-12帝京がある。延長表に3点、裏に4点の大逆転はプロでも6度だけで、12回以降では07年4月20日阪神5-4巨人(12回)の1例しかない。【織田健途】