金足農(秋田)のサヨナラ勝ちを呼び込んだのは、「逆転3ラン男」の高橋佑輔内野手(3年)だった。1-2で迎えた9回裏の先頭。紫に染まった一塁側アルプスに加え、内野席も拍手に包まれた。「こんなところで試合ができるの、幸せだな」。頭の中は冷静だった。カウント2-1からの4球目、118キロのチェンジアップに食らいつき左前へ。走りながら、鳥肌が立った。

 打線は粘り、無死満塁。三塁上の高橋は、斎藤璃玖内野手(3年)の犠打で、土煙を上げながらヘッドスライディングで同点のホームを踏んだ。すかさず立ち上がり、続く二塁走者の菊地彪吾外野手(3年)を本塁横で迎え入れた。土まみれだったが、笑顔は輝いていた。「県大会は(春の王者で)追われる立場で苦しかった。甲子園では、挑戦者という気持ちで楽に戦える」と話す。

 2日連続で、歓喜の輪の中心にいた。前日17日横浜戦では、2点を追う8回に「高校1号」の劇的な逆転3ランを放った。携帯を使える時間は限られているが、確認した際にはLINEが120件。「まだ全部に返信できていません」とうれしい悲鳴だ。手にしたホームランボールは、カバンに入れて大切に持ち歩く。

 伝統校や、強豪私立をなぎ倒して84年以来の4強入り。「34年前の記録に並べてうれしいです。私立に勝ち続けているのも、うれしい」と胸を張った。次戦は日大三(西東京)とぶつかる。「強い高校と意識しないで、やりたい」。その言葉には、自信がみなぎっていた。【保坂恭子】