U18(18歳以下)アジア選手権が3日、宮崎で開幕した。東北からは八戸学院光星(青森)の仲井宗基監督(48)がヘッドコーチ、岩手県高野連の佐々木明志理事長(54)が総務として高校日本代表に携わっている。1次ラウンド、香港との初戦は26-0で圧勝発進。運営をサポートする佐々木総務に、日本の強さを聞いた。【取材・構成=高橋洋平】

これが高校日本代表のすごさなのか-。佐々木総務は、日本全国から選ばれた精鋭18人に感心していた。「技術のレベルは相当高いが、当然人間としても素晴らしいものを持っている。野球脳が素晴らしい。今、試合で何をやるべきなのかを、冷静に判断できている」。早大野球部出身で、卒業後は母校の水沢高や東日本大震災前後の高田高の監督を歴任。指導者経験も多彩な佐々木総務が見た高校日本代表のすごさとは。3つの視点で分析した。

<1>打者の修正能力

試合中のベンチ内での光景にヒントが隠されていた。数試合をこなす中で、佐々木総務は凡退した打者がベンチ内で球筋や配球、凡退した理由などを明確に話し合っている姿を見て、衝撃を受けていた。

「打ち取られた打者が凡退に気落ちすることなく、チーム内で球筋や狙い球を共有していたのには、びっくりした。客観的に打ち取られた理由を分析するのですら難しいのに、それを他の打者が聞いて修正するのは、相当レベルが高くないとできる作業じゃない」

<2>投手のカウント球

岩手大会ではカウントが悪くなってからの四球、ストライクを取りにいった直球を痛打される場面がよく目立つ。高校日本代表レベルは3ボールからでも簡単にストライクが取れる。投球の組み立てが自由自在だった。

「投手の制球力のレベルが全然違う。3ボールになっても慌てないし、直球だけじゃなくて変化球でも簡単にストライクが取れる。これは岩手大会レベルではなかなかできないこと。捕手側からしても、意図的に3ボールに持ち込んで打者の打ち気をそらしてから勝負をできるのは大きい」

<3>キャプテンシー

代表として勝つには、チームとしてのまとまりが必要となってくる。今夏2度目の春夏連覇を達成した大阪桐蔭でも重責を担った中川卓也内野手(3年)が主将を務める。チーム結成後、中川から選手間ミーティングをやりたいと進言してきた。その輪に加わった佐々木総務は具体的な中川の言葉こそ明かさなかったが、主将の言動に驚きを隠せなかった。

「永田監督が言うには、今まで代表では選手間ミーティングの実例がなかったと聞いている。短期間でチームとしてまとまるかが課題だったが、中川のキャプテンシーが想像以上にすごかった。中川の言葉は監督の言葉。監督が言おうとしている言葉を、中川が先に伝えている。話し方もそうなんだけど、言葉にも説得力がある。これは大きい」

第100回大会を終えた直後の高校日本代表に関われるのは非常に大きい財産だ。アジア大会2連覇達成を目標に、岩手へ凱旋(がいせん)する。佐々木総務は「この経験を岩手県に還元して、生かしていきたい」と宣言した。

東北勢はこの夏、11年連続で準々決勝以上に進出。金足農(秋田)が準優勝したが、大旗の白河越えは持ち越しとなった。第101回の夏に向けて、もう戦いは始まっている。

◆佐々木明志(ささき・あきし)1963年(昭38)9月18日、胆沢町(現奥州市)生まれ。水沢高を経て早大に進学し、硬式野球部に所属。卒業後は岩手に保健体育科の教諭として戻り、浄法寺高、水沢高、盛岡四高、高田高の監督を歴任。その後、岩手県高野連で事務局長を4年務め、16年秋には岩手国体の運営に携わった。現在は理事長2年目。盛岡工高に勤務。現役時代は右投げ左打ちの外野手。180センチ、73キロ。