高校の部は、来秋ドラフト候補の星稜(北信越・石川)奥川恭伸投手(2年)が7回11三振無失点で広陵(中国・広島)に7回コールド勝ちした。

奥川の「消える魔球」に広陵打線のバットが次々と空を切った。「追い込んでからは狙っていました」。立ち上がりの2者連続から始まって、7回で11奪三振。直球はこの日最速149キロを計測し、3安打完封で7回コールド勝ち。中国大会王者を封じ込めた。

130キロ台前半でストンと落ちるフォーク。昨春以降あまり投げなかった球種で「新球」といえる。前日9日の練習で感触をつかんでいたという。「いつもスライダーばかりだったので、全国の舞台で自分の力を試したかった」。捕手の山瀬慎之助(2年)とも話し合い、多投を決意。バッテリーの狙い通り、広陵打線を「おばけフォーク」でほんろうした。広陵・中井哲之監督(56)を「フォークが消える。今のチームであんな投手を見たことないし、現段階ではお手上げです」と脱帽させた。

奥川自身も「低めに決まっていた」と習得に手応え十分な魔球は、あの大阪桐蔭・根尾昂(18)から受け継いだものだ。今夏のU18アジア選手権で高校日本代表に選ばれており、根尾とは同部屋だった。「組み立て方や変化球の握りを教わりました」。夏の甲子園では2回戦で済美に敗れたが、全国の頂点を目指し、根尾の技術に加えて意識の高さやストイックな部分も吸収してきた。女房役の山瀬も「すごい投手を見て素直になった。U18の後は投球練習の時も、自分ですぐに聞いてくるようになった」と成長を感じ取る。

「たくさん経験をさせてもらって、今に生かしています」と奥川。最速150キロ右腕が神宮の頂に駆け上るための新たな武器を手にした。【磯綾乃】