父を超えられなかった。9人で臨んだ府中のエース杉本拓実投手(3年)は、目標にあと1歩手が届かなかった。5回まで6失点、7回から再登板し5点を奪われた。8回にはコールド負けが決まるソロ本塁打を浴び、最後の夏が終わった。

今春から投手に転向し、チームを引っ張った。当初は「本当にできるのか不安だった」と感じていたが、9人というチーム事情もあり「おれがやるしかない!」と自らを奮い立たせた。

力投の陰には、父晃良さんの支えがあった。整体師の晃良さんは、試合前日にマッサージを施した。連投を控え「あちこち痛いと言っていた」息子のために、最善を尽くした。拓実は「体がほぐれているのを感じた」と感謝した。

晃良さんは、投手を務める拓実の姿に「ピッチャーをやるとは思っていなかった」と驚く。堂々としたマウンドさばきを目の当たりにして「こんなに投げられると思わなかった。よくやった」と称賛した。

現役時代は明星高校で活躍し、28年前にはベスト16に進出した。最後敗れたのは府中市民球場の一塁ベンチで、今日と全く同じ。自らと息子を重ね「不思議な縁なのかな。(思い出が)よみがえってきた」と懐かしんだ。

拓実が府中西戦で勝利すれば、父に肩を並べ、府中の過去最高成績を更新するベスト16にたどり着けるはずだった。あと少しのところでかなわなかったが「全力でやれた。悔いはない」とすがすがしい表情を見せた。晃良さんも「やりきってくれた。親としては最高」と息子の勇姿に目を細めた。