鶴岡東(山形)が今春センバツ準優勝の習志野(千葉)を9-5で破り、春夏通じて同校初の甲子園1大会2勝を挙げた。

連続先発の影山雄貴投手(3年)が8回途中まで7安打4失点と踏ん張り、池田康平投手(3年)との左腕リレーで逃げ切った。打線は2回に集中打で5点を先行し、2番手の148キロ右腕・飯塚脩人(3年)にも7安打を浴びせ、4点を奪ってみせた。守備も連続無失策で投手陣をもり立てた。17日の3回戦は第4試合で、8強入りを懸けて関東第一(東東京)と対戦する。

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影山にとって、初めて体験する満員札止め4万4000人の大観衆、そして習志野名物の「美爆音」など、どこ吹く風だった。130キロ台後半の直球にスライダーとチェンジアップを織り交ぜ、相手打線を仕留めていった。8回1死で降板するまで1奪三振も、持ち前の打たせてとる投球で、打者32人を92球で料理した。「気を抜いたらやられる相手。冷静に自分のリズムで投げました」。試合後、報道陣に囲まれても、普段と変わらぬ静かな口調で答えた。

打でも自らを助けた。2回表2死一、二塁から右越えの2点適時二塁打を放った。9番打者だが、山形大会準々決勝の羽黒戦で本塁打の隠れ「二刀流」。8回には飯塚の直球を左前にはじき返し、「準優勝投手で140台後半ですからね。打ってみたいなあと思っていた」と、この時ばかりは満面の笑みを浮かべた。

初戦ではU18日本代表候補の左腕・香川卓摩(高松商3年)、そしてこの日の飯塚と、ビッグネーム相手にも臆することがなかった。山形大会でも昨年覇者の羽黒戦、決勝の山形中央戦で先発を任された。自らの性格を「マイペースで自己中心ですね」と認める。習志野の応援についても「マウンドでは全く気にならなかった。交代してベンチに戻ってから、すごいなあと思いながら見ていた」と振り返った。

大井光来捕手(3年)は「アイツは何も考えていないので、とにかく押してこいと言い続けた」と操縦法を明かした。平山雄介主将(3年)は「変わりもん、天然です」。余興では同じ186センチの長身、相川陽投手(3年)とコンビでアンガールズの田中役になりギャグを披露するなど、物おじしない性格が大舞台でも真価を発揮した。

兵庫県宝塚市出身で、15、16年に東成シニアの先輩のプレーを甲子園で観戦し、山形行きを決めた。冬場は膝上まで積もる雪になえかけたこともあったが、「雪の上を頑張って走ったことで鍛えられました」。雪国の鍛錬で入学時は120キロ台前半だった最速は、140キロまでアップした。「初めて2勝できてうれしいです」。さらに歴史を塗りかえるつもりだ。【野上伸悟】