星稜(石川)の林和成監督も延長14回を165球、23奪三振1失点で投げ抜いた奥川恭伸(3年)に驚くばかりだった。

「僕が見た中でベストピッチ。本当に末恐ろしい。あらためて“こんな子とは、もう一生巡り会えない”と思いました。春の履正社さん相手でもそうですが、相手によって(強いほど)牙をむく。延長になってもコーナーに150キロ以上の球を投げていたので“もう奥川で(最後まで)行くしかない”と思った。ゾーンに入っているようで、こちらの声も聞こえないというか、下手に声を掛けられなかった」。

奥川は延長11回表、マウンドで右ふくらはぎをつった。その時点で球数は130球超。それでも「ドクターストップがかかるまでは…。幸い(昨夏の)済美戦のように明らか(に足をつった状態)でなく、ビクッとした程度だったので」と継投は考えなかった。奥川は直後の11回裏は先頭打者。高野連関係者から「少し休む?」と打診されたが「大丈夫。行きます」と打席に向かったという。

準々決勝は18日で連戦になる。奥川の連投の可能性を問われて「まずは、どこまで回復しているか。明日の朝起きて様子をみてになると思う」と話した。「あれだけのピッチャーなので、ベンチとしてはそりゃあ投げてほしいです。でも、8、9割のコンディションでないようなら…無理はさせたくありません」と複雑な表情を見せた。

指揮官としては、壮絶な試合を制した心境はピンと来ない。6番福本陽生(3年)のサヨナラ本塁打を「入るとは思わなかったので、入った瞬間は“ウチについている野球の神様がドラマを作ってくれたのかな”と」と不思議そうに振り返る。

16日夜のミーティングでは「今、俺にはワクワクしかない」と選手に話したという。「県大会準々決勝あたりから、ずっとプレッシャーがあったのに、昨日は全然なかった。この大舞台で、相手が智弁和歌山さんで、もう喜びしかなかったです」。しかも、勝利という最高の結果。「監督冥利(みょうり)に尽きるとはこのこと。ありがたい。幸せ者です。こんな試合を“特等席”で見られるなんて」。監督というより、一野球人としての感激を口にした。