仙台育英(宮城)が4-3で敦賀気比(福井)に逆転勝ちし、2年ぶり5度目の8強入りを決めた。

「9番中堅」水岡蓮外野手(3年)が3安打1打点の活躍。3回表に3失点したが、5回裏2死から水岡の左中間三塁打を皮切りに2得点。6回には木村航大捕手(1年)のスクイズで同点にすると、2死一、三塁から再び水岡が右前適時打を放って勝ち越した。9回表のピンチは左腕・笹倉世凪(1年)が1死三塁から登板し、三振締め。18日の準々決勝では、プロ注目右腕の奥川恭伸(3年)擁する星稜(石川)と対戦する。

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水岡の野球への真摯(しんし)な姿勢が、勝利を呼び込んだ。3-3と同点に追いついた6回裏2死一、三塁。右前に鋭く適時打を放つと仲間に向かって一塁上でガッツポーズ。「県大会から結果が出ていなかったので、甲子園で結果を出せて本当にうれしかった。3年生が決めなきゃいけないという思いで打ちました」と白い歯を見せた。

反撃の口火を切ったのも水岡だ。5回裏2死から、直球に逆らわずに左中間へ。「センターがダイビングキャッチしようとした時にカバーが間に合っていないと思った」と、50メートル5秒9の快足で三塁へ到達した。復調へ、2回戦まで打率7割だった中里光貴内野手(3年)の助言を受けた。前日16日の練習から、トップの位置と左足を引いた位置を固定する新打撃フォームに変更。「お互い1番を打ちたいライバルですけれど、競い合っているからこそ高め合える存在です」。続く中里の右中間適時二塁打で生還した。

練習以外の時間でも、頭の中で打つイメージを描き続ける。鏡の前に立てば必ず、バットを持たなくても打撃フォームをチェック。学校の教室でも窓ガラスに映る自分の姿を見つめながら、スイングの形を確かめる。思わず授業中に立ち上がって実行してしまい、先生から注意を受けたことも。現在は必ず授業中に挙手して質問することを徹底。素振りしたい葛藤を払拭(ふっしょく)した集中力育成が、聖地で結実した。

決勝打の演出と、9回のピンチを救ってくれたのは1年生だった。6回の攻撃では木村がスクイズで同点とした直後、笹倉が右前打で好機を広げた。1点リードの9回は、一塁から登板した笹倉が中軸を封じた。中学の軟式では147キロを計測したが、高校入学後最速145キロの直球で4番を左飛、5番を空振り三振に封じた。笹倉は「3年生の守備を信じて投げた」。木村も「最大の緊張場面だと思うけれど、堂々と腕を振ってくれた」とたたえた。

準々決勝では星稜と対戦する。この日、智弁和歌山に延長14回165球を投げた奥川に対し、水岡は台風の影響で休日になった15日に仲間と「大阪スパワールド」に出向き、プールや温泉を堪能して元気いっぱい。水岡は「流れるプールでリラックスして最高でした」と笑顔。「奥川くんが間違いなく大会NO・1投手なので一番対戦したかった相手。今日みたいなバッティングでキレの良い真っすぐとスライダーも打ちたい」。お立ち台でも奥川撃破をイメージする打撃フォームを披露した。【鎌田直秀】