関東第一・平川嶺外野手の打球が右前に飛んだ。延長11回2死一、三塁。9回に続き目の前で4番平泉遼馬内野手が敬遠された。「9回は内角真っすぐに詰まった。また直球が来る」。初球の内角138キロを引っ張った。公式戦初のサヨナラ打に「最高です!」と声を弾ませた。

歓喜の輪には、背番号5の三塁コーチ金森優内野手(3年)もいた。先へ、先へと走塁する“関一野球”を支える。神髄は1点を追う7回1死二塁。平泉の左前打に鶴岡東の左翼丸山はチャージ。だが、打球に合わせ一瞬、減速したのを、金森は見逃さなかった。「少し迷ったけど、レフトが歩幅を合わせたのが見えた」と止まりかけた両腕を再び回した。二走の渋谷は「信用してます。三遊間で一緒に野球をやって来た仲」と同点ホームを踏んだ。

金森は1年冬に「ネフローゼ症候群」を発症。尿からタンパクが出て、体がむくむ。1カ月以上入院し10キロ以上、体重が落ちた。医師には野球をやめるよう勧められた。1日10錠の薬の副作用で不眠症にもなったが「甲子園は夢。諦められない」と戻ってきた。「今の体でできることを」と三塁コーチの腕を磨く。だが2回戦の熊本工戦前に再発。かかりつけ医の元へ帰京する前、チームメートたちに「戻って来られないかもしれない。頑張ってくれ」と託した。幸い、点滴を受け再合流。再び腕を振る。

米沢貴光監督(44)も「判断力はチームNO・1」と信頼。結束力で8強進出を果たした。【古川真弥】

▽関東一・土屋(7回から1安打無失点に抑える好救援)「我慢、我慢と心の中で自分を鼓舞しながら投げました。勝利がうれしくて校歌を歌っていたとき泣いてしまいました」