由利は逆境に強い。秋田南を8-5で破り、初の秋4強を決めた。打線は6回裏1死まで無安打、安打数は4対14と大差をつけられた。それでも4番の佐藤哲矢捕手(2年)が4打点で反撃の口火を切り、ピンチの場面で投手を務める「二刀流」で勝利をつかんだ。

背番号2の佐藤哲が2-4の7回表1死三塁でマウンドへ。2人を二ゴロと三振に封じて流れを大きく引き寄せた。「絶対に抑えるという気持ちだった。マウンドからホームが近く見え調子が良かった」。同裏2死満塁で打席が回り、必死に食らいつき左前に2点同点打。安保勇咲主将(2年)から「決めてこい」と打席に送り出され、「『自分が』という思いだった」。この回は四死球に失策を絡め、適時打1本だけで6点を奪い形勢逆転。6回にも2点打を放った佐藤哲が再び輝いた。

8回には定位置の捕手に戻ったが、途中で2度目のマウンドに向かい2人を打ち取った。9回も続投し0で締めた。「やっと勝った。長かったなという気持ち。監督からここで負けたら中央地区予選1回戦敗退でも同じと言われていたので、ホッとした」。小3から野球を始め、小6と中3で投手を経験。今春から投手を兼任する。最速137キロで夏まで直球しか投げられなかったが、外部コーチの指導で3つの変化球を習得。「チームにできることは何でもやりたい」。異色の二刀流が由利を初の東北大会に導く。【山田愛斗】