南海、ダイエー、西武、阪神でプレーし、92年には首位打者を獲得した鹿児島城西の佐々木誠監督(54)が今夏、甲子園に凱旋(がいせん)する。日本高野連は10日、8月に甲子園球場で交流試合を開催することを発表。出場予定だった今春のセンバツ、夏の全国高校選手権大会も開催中止になった分、熱い思いを胸に夢舞台に立つ。

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元トラ戦士の佐々木監督が、夢の甲子園出場に感謝した。朗報を受け「夏も中止になって、戦わずして夢破れるという感じでしたが、このようなサプライズがありまして、日本高野連の思い、そして阪神タイガースさん、甲子園球場長の計らいだったり、高校野球のために甲子園球場を空けていただき感謝しています」と喜んだ。

この日午後4時過ぎ、学校長から選手たちに吉報が届けられた。だが「理解しているのかなと思う。内容ははっきり分かってないと思う」と指揮官。実際、古市龍輝主将(3年)は「どういうことか分からなかった」と言い、全員があまりの驚きに言葉を失った。

もちろん、やるからには全力を尽くす覚悟だ。佐々木監督は「最後までやりきれば必ず報われると日々言ってきたので、報われて良かった。プロとアマ野球は違う。高校野球は別物だが、指導者の立場で行くので新鮮です」と声を弾ませた。

7月18日の組み合わせ抽選で決まった対戦相手と1試合限定で戦う。だが3年生の“引退試合”にするつもりはない。「ただの1試合じゃない。鹿児島城西がどんな野球をするのか、披露したい」と意気込んだ。現役時代、強打者として知られた監督ばりのフルスイングで真剣勝負を挑む。

5月20日に夏の甲子園中止が決まった。その際、「センバツが中止になった思いを夏へ向け、心ひとつにしてやってきたが残念」と悔しがった。それでも選手たちに「目標がなくても、心折れても、もう1回立ち上がって、自分たちがやることを見つめなおして、しっかり(下級生に)伝えなさい」と諭した。

コロナ禍でセンバツ開催が危ぶまれていた一時期、深酒しても眠れない日々が続いたという。凱旋の夢舞台で晴れやかに暴れ回る。【菊川光一】