4地区分離の福岡県独自の代替大会では、筑後地区大会1次リーグ(特別ルールで7回制)に登場した大牟田・猿渡歩真投手(3年)が、朝倉光陽相手に5回参考ながら今夏全国で第1号のノーヒットノーランを達成。19-0の5回コールドで快勝した。

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大牟田の「二刀流」エース猿渡が、コロナ禍を吹き飛ばす61球の快投を演じた。19-0で迎えた5回。最速140キロ右腕は、最後の打者をこん身の直球で3者連続となる三振締めだ。「意識はなかった」というノーヒットノーランだったが、終わった瞬間「あー、打たれなかったんだな」と余韻をかみしめた。

初回の3者連続など奪った三振は13個で、遊ゴロ1、捕飛1の堂々たる内容だ。5回、先頭打者に唯一の四球を与えたが「ストライクが先行し、投手有利のカウントで攻められた。いい投球ができた」と声を弾ませた。得意のスライダーやカットボール、チェンジアップとのコンビネーションも抜群だった。

元々クリーンアップを務めるほどのパワーが持ち味だ。冬を越え、川口寛史監督(38)が「体の力強さが出て、夏は連戦があるので投手として考えた。思った以上にスピード、キレが出てきて主戦で行ってみようと思った」という素質が開花した。基本は三塁手だが、中学でも投手経験があることから今春から本格的に兼務した。成長著しく、1年秋以来の公式戦登板となる筑後地区大会で、背番号1を奪い取った。

コロナ禍で全体練習は1カ月半できなかった。ただ自粛期間も自宅でランニングや素振り、体幹トレなどを欠かさなかった。甲子園出場の夢が途絶え「何のために野球をやってきたんだろう」と落ち込んだ。だが代替大会開催に「みんなで最後は優勝したいと気持ちを入れ直した」と気迫の投球につなげた。西日本短大付など強豪校撃破での優勝を目指す。【菊川光一】

◆猿渡歩真(さるわたり・あゆま)2002年(平14)8月8日、福岡・大木町生まれ。野球は、小1から軟式の大溝ホークスで始める。中学は、ポニーリーグの柳川ボーイズ所属。大牟田では1年秋から三塁手でレギュラー。今春から本格的に投手も兼ねる。右投げ右打ち。174センチ。76キロ。