「野球が好きだ」という気持ちがボールに乗った。町田工(西東京)のエース、金田唯斗主将(3年)が8回を毎回の12奪三振で2安打1失点に抑え、チームを2回戦突破に導いた。5回までは無安打投球で、6回に許した初安打はボテボテの三塁内野安打。失点も押し出し死球のみで「努力が結果につながったのかなと。うれしいの一言です」と笑った。

野球を諦めかけた時があった。元々は同期6人だったが、次々と退部。今年の新チーム結成時には、たった1人になった。モチベーションが上がらず、辞めようとした時に声をかけてくれたのが、小松雄一監督(38)と、両親だった。小松監督は「勝つことも大事。だけど、3年間やり切るのも大切なんだ」。両親は「辞めるのは簡単。続けるのは難しいよね」と、続けることを強制はしなかったという。金田は「親ってすごいなと思いました。この壁を乗り切れば強くなる気がしました。何より、野球が好きなことを再認識できました」。もっと強い人間になるために、再びグラウンドに戻った。

助っ人を入れて12人の部員で、この日の試合に臨んだ。最上級生として、主将として、試合中は後輩たちへの声掛けを絶やさなかった。「この夏は、両親や小松先生のために自分の力を出し切りたいです」。支えてくれた人たちへ、大好きな野球で恩返しする。まだまだ夏は終わらせない。【阿部泰斉】