佐久長聖の先発左腕出口拓弥(3年)と岡谷南の先発、変則右腕の高橋佳(3年)の投げ合いで、両チーム無得点のまま9回まで進んだ。岡谷南は9回表に先頭の古野道郎外野手(3年)が中越え三塁打で出塁。佐久長聖は出口をあきらめ藤井輔(3年)にスイッチした。

無死三塁で、打席に入ったのは小口航生内野手(2年)。14日に行われた4回戦の松本国際戦、1-3で負けている9回表に逆転3ランを放っている。その小口はカウント2-1からの4球目をサード前にセーフティースクイズ。小口は「サインが出た瞬間は頭が真っ白になりましたが、絶対に決めてやろうと思いました。インコースなら一塁側、外角なら三塁と思っていました」と、冷静に貴重なセーフティースクイズを成功させた。

三塁走者の古野は「リードはあまり取れませんでした。3回に三塁走者が捕手からのけん制でアウトになっていたので、すぐに戻れるくらいの距離を保っていました。セーフティースクイズをした瞬間のスタートは遅れました。でも、そこからは最短でと思って飛び込みました。キャッチャーとはかぶっていません。右手でタッチしました」と、詳細に状況を説明した。

先発の高橋が粘り強く投げ、昨年9月に監督に就任した春原ケンジ監督(31)も継投と1点を取ることに集中していた。「あの場面はいろいろ考えました。何でもいいから点を取って来いと。サインについてはいろいろありますから」と、笑顔で細かい作戦は明かさなかったが、実績に勝る佐久長聖相手に9回に1点を奪って勝ちきる勝利に会心の表情。「昨年監督になった時から佐久長聖をどう倒すかを考えてやってきました。選手が力を発揮できてうれしいです」。

一方、敗れた藤原弘介監督(46)は、沈痛な表情で気落ちするところを奮い立たせるようにして敗戦の弁を語った。「打てなかったですね。昨年(独自大会)は勝たせてもらいましたが、代替大会でした。今年こそは何としてでも、と臨んだ大会でしたが、勝たせてあげられず申し訳ない気持ちです。春も完封で負けてます。考えないといけません。今は3年生にお疲れさまと言ってあげたいです」。

2回裏には1死三塁で打者出口という場面もあったが、結果は三振でその後も後続が倒れて先手を取れなかった。「スクイズだったかなとも思いますね。残塁が多かったです」。すぐそばで歓喜の春原監督の勝利インタビューが聞こえてくる中、必死に言葉を選びながら準々決勝で力尽きた試合を振り返っていた。