富士学苑は、春夏通じて初めての甲子園出場にあと1歩届かなかった。準優勝に終わり、長谷知雄監督は「甲子園は遠いなと感じた。片足が乗りかかった新幹線が、大阪に着かないなと。1点が遠かった。あと1本が出なかったところが、敗因です」と笑いを交ぜながら振り返った。

2点を追う7回1死一、三塁、宮下拓也内野手(3年)の三ゴロの間に1点を返した。

今大会、3試合連続で逆転勝ちをおさめている土壇場の力強さを、決勝でも見せた。1点を追う9回、先頭の池谷大和捕手(3年)が四球を選ぶと、ベンチの選手たちはガッツポーズ。2死二塁としたが、あと1本が出なかった。

河村大翔投手(3年)が1人で投げ抜き、8回を被安打6の2失点。7回終了後に、監督からは交代を告げられたが「投げさせてください」とベンチで直訴し、投げきった。「エースとしてやってきたので、監督にお願いしました」と明かした。試合直後には涙もあったが、すぐに笑顔になった。「負けてしまったけど、このチームでできてよかった。悔しい気持ちもあるけど、うれしくて、楽しかったです」と晴れ晴れとした表情だった。

スタンドには「常笑」の横断幕が掲げられていた。ベンチでも、マウンドでも、笑顔があふれた。スローガンは「ばかになれ」。いい意味で、ばかになって野球を楽しむ。それを決勝でも見せられた。五味龍星主将(3年)は「山梨で1番楽しむ夏にしようと言っていて、最後までやれた。どの高校よりも、楽しめたと思う。最後まで、全員でやりきれた」と明るい笑顔だった。