決勝進出を逃したが、エースの表情は晴れやかだった。県内屈指の進学校、長田の松田宰投手(3年)は8回を119球で投げきった。5失点したが、10三振を奪う力投。小さいテークバックが特徴的な右腕は、元々は下手投げ。大会直前の5月にスランプに陥り、上手投げにフォームを変えた。「タイミングが合わなくなり、抜け球が増えた。チームを勝たせるために思い切って決断した」。

この試合では社打線につかまると、とっさに横手投げでタイミングを外した。日頃練習しているわけではないが、「試合が始まり、打たれるなと思って変えた」。打者を抑えるため、形にこだわらず、臨機応変に投げた。

卒業後は大学に進学し、プレーを続けたいという右腕。「社の選手と、もし大学で当たった時に、見劣りしない、成長した姿を見せたい」とリベンジを誓う。同校の4強入りは67年ぶり。「甲子園に行けなかったのは悔しいが、長田の歴史をつくったという、やりきった感が大きい」。背番号1の目に、涙はなかった。【波部俊之介】