<全国高校野球選手権:慶応6-3広陵>◇16日◇3回戦◇甲子園
高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。
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最後のあいさつ。アルプス席を見上げると、広陵・小林隼翔(はやか)内野手(3年)は顔を赤くして涙をこらえた。「広陵の主将としてグラウンドで泣くわけにいかない。後輩に示しがつかない。ホテルでもバスの中でも泣けますから」。名門のプライドを貫いた。試合では3安打を放ち、存在感を見せつけた。
チームの和も、勝つための策も突き詰めてきたリーダーだ。中井哲之監督(61)からは「優しくて背中で語れる主将です」と全幅の信頼を置かれた。寮ではテレビもネット動画も見ないほどストイック。「広陵に野球をやりに来たので、今は必要ありません」。
岡山・倉敷市の出身。女手一つで育ててくれた母優さん(44)の元を離れた寮生活。正月以外は会えない母とは公衆電話でつながっていた。今年からスマホが解禁になっても公衆電話で母の声を聞いた。隼翔ならできるよ-。
「つらい時、いつも背中を押してくれた。離れていても一番近くにいる。僕には必要不可欠な存在です。感謝してもしきれないからシンプルに伝えたいです。『ありがとう』『これからもよろしく』と」。顔を合わせるのは久しぶり。短い言葉に、ありったけの思いを込めるつもりだ。【柏原誠】

