第96回選抜高校野球大会(18日開幕、甲子園)の組み合わせ抽選会が8日、大阪市内で行われた。元日の能登半島地震で被災した日本航空石川は地元からの勇気を背に、大会第6日の第1試合で常総学院(茨城)と初戦を戦う。開幕カードでは八戸学院光星(青森)と関東第一(東京)の実力校がいきなり対戦。近畿王者大阪桐蔭は、甲子園優勝経験校が5校の激戦ブロックから5度目のセンバツ頂点を目指す。
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5秒ほど、宝田(ほうだ)一慧主将(3年)は斜め後方の組み合わせ決定ボードを眺め、ほほ笑んで抽選に臨んだ。「どこになるのかなって」。表情は穏やか。少し武者震いしたくじ引きの瞬間以外は終始、視野が広かった。日本航空石川は、常総学院の横に入った。
長い2カ月だった。予期せぬ震災、奪われた日常、山梨での新生活。「自分たちの人生においていい経験です」としつつ、もちろん傷ついた。猛練習を共有してきた部員間でも「一度気持ちが離れてしまったり」という段階があった。
本当に今、野球をやっていいのか-。悩む選手も多かった。中村隆監督(39)は「彼らも甲子園目指して人生かけてるんですけど、それは生死を分けることではなくて」と言う。能登にはそこに直面した人々がいる。「(部員は)好きなことをやっているので。深さが違うというのは戸惑いがあったところかなと」。
ある種の後ろめたさを消したのは“能登の言葉”だった。もらった多くの勇気の中でも中村監督は特に、輪島高・冨水諒一監督の言葉が忘れられない。
「しんみりしてやってもあかんで。被災者の人は喜ばへんから。おまえらが思い切ってやることでこっちも元気になるから。被災者ムードを出すなよ」
野球やっていいんだ-。「航空の子ら、思い切って野球やってや」。数多くの声でここまで来た。だから今度は。「周りの人に感謝する気持ちがそれまで以上になりました」と感じている宝田主将が言う。
「2カ月たってもなかなか復興しなくて。そこに少しでも自分たちが、何かを届けられれば」
17歳は勇気とも元気とも言わず“何か”と言った。やるべきことを力いっぱいやればきっと、心を震わせる人がいる。【金子真仁】
○…日本航空石川の甲子園メンバーが決まった。調子を上げている福森誠也投手(3年)が入学後初めて公式戦でベンチ入りし、背番号19を付ける。震災では祖母宅で被災し、祖母をおぶって避難した。「いろんな声が出てくる可能性がある。震災がどうとか。でも(選出理由は)それじゃないから負けちゃダメだと彼に話しました」と中村監督。石川と山梨の日本航空両校の吹奏楽部が合同演奏で応援することも決まった。

