関東第一・中里駿介内野手(3年)は試合前の本塁上での整列へ、われ先にダッシュした。立ち止まって並ぶかと思ったら、一瞬だけ身をかがめた。
2時間以上たって、無念にも準優勝が決まってから謎が解けた。
「パッと足元を見たら、ゴミが落ちてたんで。なんかラベルみたいなのが」
ささっと立ち上がり、整列し一礼。拾い上げたラベルはポケットにしまい、ベンチに戻ってからゴミ箱に捨てた。
「落ちてたら、見て見ぬふりはいけないので」
大注目の決勝戦。その整列で一瞬だけ違和感のある動きをしてまで、突き動かされる理由がある。
「それで(打球が)イレギュラーとかして負けたくないですし。そういうのがプレーの邪魔になってしまうのはイヤなので」
この春に低反発バットが採用され、どん詰まりのゴロや、変な回転をするゴロが増えた。確かに、マウンド周辺の地ならしは大事な作業ではある。ただ中里は投手ではないし、スタメン出場でもない。それでも突き動かされる。
「チームのためにというか。例えば誰かがエラーしても、野球はチームプレーなので、誰か1人の責任にはできないので」
米沢貴光監督(49)は「誰もがホームランを打てるわけじゃない。でも全力疾走ならみんなできる」と言う。気付いたらゴミを拾うのも同じこと。「全員が全員、下級生もみんな、誰でもできることは徹底してやらないといけないので」(中里)と、思いは全員に根付く。ノックをたくさん受けていることだけが、甲子園をわかせた関東第一の堅守の源ではない。
一塁コーチャーで声をからした決勝は、最後に代走での出場機会が巡ってきた。最後は三塁走者として。自分がホームに生還すれば試合はまだ続いたが、願いはかなわなかった。
日刊スポーツのカメラマンによると、試合後にスタンドにあいさつへ向かう際もゴミを拾っていたそうだ。そんな彼も閉会式が終わったころにはもう涙は乾き、仲間たちに愛される笑顔が戻っていた。
「もう、最高の舞台でした。周りを見渡せば、なんかもう、観客の皆さんが応援してくれますし、グランドも広いですし。土も、とてもいい土で」
黒土と緑のツタと青空と。美しい甲子園球場を一生忘れない。【金子真仁】

