日刊スポーツはセンバツ期間中、負けチームにもスポットを当て、「胸張ってイイじゃん」と題して球児たちの奮闘に迫ります。

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チームにたった1人の「選手コーチ」の吉村がチームをサポートした。

初戦で前年覇者の横浜を封じた智弁学園のプロ注目左腕の杉本真滉(まひろ)投手を打ち崩す杉本対策が必至だった。名乗りを上げたのは、1年夏まで左投手で、現在は選手と指導者の間に立つ選手コーチの吉村。本番までの数日間のみならず試合の朝も、約30分間仲間に投げ続けた。練習後、制服に着替えて記録員としてベンチ入り。試合は敗れたが、すかさず「杉本くんからみんな振らされていた。いい投手でした」と相手の好投に敬意を込めた。

幼少期から神村学園に通い、中等部、高等部でプレー。高1の夏、キャッチボール中に左腕が上げらなくなる思わぬアクシデントに見舞われた。治療に専念するため、自ら選手生活に終止符を打った。「何かできないかと考えている時に(小田大介)監督さんが『選手コーチは将来につながるよ』と」。同部はマネジャー0人。指揮官の提案で、部員1人だけの選手コーチになった。

全寮制の同部は、携帯電話は禁止。外部のやりとりは1台の公衆電話のみだ。普段、指導者と部員のやりとりで使用する野球部の1台の携帯を吉村が持ち、日程調整や必要な用具管理などを行う。

「みんながいい表情で野球をしていると、自分もいい気持ちになる」。中でも選手のコンディション管理も吉村が大切にしている仕事だ。治療機器の取り合いにならないよう、練習の合間を縫って補助作業も。2回戦は3回に右翼手で主将・梶山侑孜(ゆうしん)外野手が痛烈な打球をダイビングキャッチ。「アウトにしてくれると思っていて、本当にうれしかった」。勇気あるプレーに、吉村もベンチで拳を握った。

小田大介監督(43)もその仕事ぶりに信頼を寄せる。「スタッフと同じ動きができてすごくありがたい。指導者の目が行き届かない場所で、彼が目を光らせてスタッフと同じ目線で頑張ってくれている」。

2回戦で無念の敗退となったが、ここで終わりじゃない。「もっとみんなにきびしい目線で、メンタル面を含めて、負けないチームを作りたい」。吉村選手コーチは夏を見据えた。【中島麗】