<高校野球和歌山大会:箕島7-2日高高中津分校>◇16日◇2回戦

 生前、いつも故人がいた場所に笑顔の遺影が飾ってあった。和歌山・紀三井寺球場のネット裏本部席。今年3月6日に亡くなった尾藤公元監督(享年68)の写真が見守る前で、箕島が日高高中津分校に快勝した。

 4回、川口紘輝投手(3年)が抜けたスライダーを投げて同点2ランを打たれた。戻ったエースに、松下博紀監督(47)は「野球にミスはつきものや。そのあと頑張ればええんや」と言って聞かせた。監督自身が箕島で学んだ3年間で、亡き恩師から教えられたことだった。

 エースは立ち直った。5回以降は散発2安打無失点。6回には試合を決める高校1号3ラン。「大切な夏だと感じています。絶対に甲子園に行こうと盛り上がっています」。尾藤元監督から直接指導を受けたことのない世代でもこの夏は特別と感じていた。

 本部席の遺影は普段、和歌山・有田市の自宅にある。尾藤元監督の箕島の後輩、石井捷平さん(66)が「一緒に来ました」と運んで来た。さとみ夫人(63)は葬儀後体調を崩したが、今は回復。尾藤スマイルの写真と甲子園に戻る夢を、松下監督に託す。写真をバッグにしのばせ、恩師のいない夏初戦を勝った松下監督は「勝ちました、とお墓にご報告します」と涙をぬぐった。【堀まどか】