<高校野球広島大会:呉7-6広島国際学院>◇23日◇4回戦

 創部5年目の呉が2年連続8強進出を決めた。先発柏尾篤哉投手(2年)が、延長11回を投げ切り、サヨナラ勝ち。柏尾は、中村信彦監督(56)が、尾道商監督時代の教え子である広島山内泰幸投手コーチ(38)に「投げ方や度胸が似ている」と評する肝っ玉エース。大黒柱の粘りで、初の甲子園が見えてきた。

 柏尾の165球が報われた。相手は春8強で第3シードの広島国際学院。7回途中から、エース今井金太投手(2年)にスイッチしてきた。それでも1人でマウンドを守った。「先輩方なら必ず今井を打ってくれるはず」と、胸の中で繰り返した。16安打されたが、スライダーで要所を締めてビッグイニングを許さなかった。11回先頭・数実(かずみ)健太外野手(3年)のサヨナラ弾に「ありがとうございました」と感謝した。

 07年創部の5年目チームが、2年連続で8強進出だ。呉の前身は呉豊栄。1959年(昭34)に女子の公教育機会拡大のため全国でもまれな家庭科専門校として設立された。98年に男子生徒の入学を促進して現校名に。市民の「呉地方唯一の市立高に野球部を!」の機運に乗る形で、中村監督が就任した。78~95年まで指揮を執った尾道商を、センバツに3度導いた。口コミで有望選手が集まるようになると、チームが機能するまでに時間はかからなかった。

 尾道商時代に現広島コーチの山内泰幸氏を指導した中村監督は言う。「柏尾を最初に見たときは、山内によく似ているなと思った。打者の手元でピュッと伸びる球筋、スライダーの切れ、それに物おじしない度胸。柏尾を山内のように育てたいとの意識はあった」。さらに「2年から芽が出ている点も同じだね」と目を細める。

 変則の上手投げで「UFO投法」と呼ばれた山内氏の後継者に指名された柏尾は「ここまで来たからには、絶対に決勝まで行きたい」と語気を強めた。山内氏は甲子園に届かなかったが、柏尾はあと3勝。中村監督は「最初に取られ過ぎたが、何とか失点を止めてくれた」と話し、次戦に目を向けた。【佐藤貴洋】