<高校野球春季東北大会:仙台育英5-1盛岡大付>◇10日◇決勝◇荘内銀行・日新製薬スタジアムやまがた

 仙台育英(宮城)が盛岡大付(岩手)を下し、14年ぶり11度目の優勝を果たした。今秋ドラフト候補の4番上林誠知外野手(3年)が3回の先制打を含む2安打3打点の活躍。連日の暑さからくる体調不良の中、これまでもチームを勝利に導いてきた勝負強さを発揮した。盛岡大付は4失策と守備が乱れ、09年以来2度目の優勝はならなかった。

 勝負を決めたのは、やはりこの男だった。3回1死二、三塁。仙台育英の4番上林は、狙っていた。「直球と変化球が交互にくる」。打順が1回りし、ベンチでは全員で盛岡大付・及川豪(3年)の配球の傾向を分析し合っていた。全国屈指の攻撃力を支えるルーティン。主砲は、仕留めにきたスライダーを逃さず右前に運び、2点を先制した。

 5回にも右前に適時打を放ち、決勝で2安打3打点と役割を果たした。昨秋の明治神宮大会で満塁弾、甲子園ではワンバウンドしたボールを安打にする“イチロー級”の打撃で話題を独り占めしてきた。今大会は故障者を抱える中での優勝。主将としてもうれしいはずなのに、なぜか表情がさえない。佐々木順一朗監督(53)は「体調が良くないみたい」と明かした。

 連日の真夏のような暑さで、上林はバテバテだった。応援席にあいさつに向かう時はグッタリ。前日の夕食も箸が進まなかった。「ご飯(白米)をあまり食べられず、おかずばかり食べてました。ダメなんです、暑いの」。そんな中でもきちんと結果を出すから、やはり“持っている”。

 終わって見れば、今大会も打率3割8分5厘で満塁弾を含む9打点。全4戦で打点を挙げた。左足を痛めていたが、オーダーメードのスパイクの中敷きを取り寄せてプレーを続けた。「県大会より全然(状態は)良い。春は春で終わり。切り替えていきたい」と夏を見据えた。

 昨秋に続く東北大会2季連続優勝で、東北最強の座を譲らなかった。今夏は、東北勢の悲願「大旗白河越え」の期待がかかるが「明日から中間試験なんです…」(上林)。まずは目の前の“難敵”を乗り越え、勝負の夏に備える。【今井恵太】