<高校野球鹿児島大会:樟南4-3鹿児島実>◇23日◇決勝◇鹿児島県立鴨池野球場

 伝統の一戦は樟南の勝ち!

 樟南が鹿児島実に9回劇的なサヨナラ勝ち。3年ぶり10度目の決勝での顔合わせで、鹿児島県最多となる4年ぶり18度目の夏の甲子園出場を決めた。

 自分のバットで夢をかなえた。樟南のエース山下敦大(あつひろ)投手(3年)は同点の9回裏2死二、三塁で打席が回ってきた。「次の回、延長で投げたくなかった」と左打席から三塁へ強烈なゴロを放つと相手がはじきサヨナラ勝ち。必死でベースを駆け抜けると、ナインに瞬く間に取り囲まれた。

 前日22日の準決勝でも9回を1失点完投。この日も9回までで140球。166センチの小柄な左腕は疲労も限界だった。相手は強打の鹿児島実。春の公式戦では2度とも敗戦していた。スタメンに左打者が6人並ぶ相手に、今大会封印し続けてきた左打者対策用の秘球スクリューを解禁した。

 5回2死三塁、プロ注目の左の長距離砲・横田慎太郎投手(3年)を1ボール2ストライクと追い込むと内角膝元へ鋭く沈むスクリューで空振り三振。3回にスライダーで先制適時三塁打を許したが、しっかりやり返した。10安打を浴びたが、四死球は3、三振は6個。低めにスライダー、スクリューを集め、9回を3失点に抑えた。

 緒方壮助捕手(3年)とは、バッテリーを組んで6年目。中学時代の福岡ニュースターズ(現中央ボーイズ)からずっと一緒だ。山下は長崎か佐賀へ進学予定だったが、緒方から「一緒に来ないか」と言われ2人で福岡から樟南へやってきた。

 最速135キロの左腕は緒方と二人三脚で、最後の夏についに夢を実現した。山下は「ケンカはまったくないですね。次に何の球を要求されるかだいたい分かる」。

 この日、4、5球首を振ったが、多い方だという。寮の4人部屋でも一緒で隣のベッド。前日は2人で鹿児島実の映像を見て対策を練った。

 サヨナラでの決着に「(最後は)想像とは違いましたけどね」と、タレント山下智久似の甘いマスクで笑った。「樟南の山P」。マウンド上での勝利のガッツポーズは甲子園で披露する。【石橋隆雄】

 ◆樟南

 1883年(明16)博約義塾として創立の私立校。1994年に鹿児島商工から現校名に改称。普通科、商業科、工業科があり、生徒数は1084人(女子491人)。野球部は54年の創部で、部員は64人。甲子園は春7回、夏は4年ぶり18回目の出場。94年夏は準優勝。主なOBには阪神大和、ロッテ青野らがいる。鹿児島市武岡1の120の1。時任保彦校長。◆Vへの足跡◆2回戦7-0岩川3回戦8-1鹿児島工4回戦3-2徳之島準々決勝9-2鹿屋中央準決勝5-1鹿児島情報決勝4-3鹿児島実