最速157キロを誇る済美(愛媛)の怪腕、安楽智大投手(3年)が、最後の夏に復活を懸ける。安楽は昨秋の県大会で右肘を痛め、春季県大会は登板を回避。15日の愛媛大会1回戦、三島戦で2大会ぶりに公式戦に復帰する。

 自慢のストレートで、チームを勇気づける。愛媛大会ノーシードでスタートする甲子園への道のり。「自分の1球で試合の流れを変える。昨年の愛媛大会準決勝では、それができた。今年の夏もそういう投球ができれば」。昨夏の川之江戦。劣勢をひっくり返す起爆剤になった自己最速157キロを思い起こし、安楽は気持ちを高ぶらせる。

 センバツで準優勝し、春夏連続で甲子園に出場した1年前とは状況は違う。昨秋の県大会1回戦・西条戦でエースは「右肘尺骨神経マヒ」を起こし、チームも敗れた。3カ月後にキャッチボールを再開した安楽は、今春の公式戦には登板せず。今のチームは県内上位進出の経験がない。「結果が出ていないから、野手も自信がないのでしょう。まだチームに勢いがない」と上甲正典監督(67)。状況を好転させる最良の材料として「やはり安楽の投球。150キロが出れば、チームは勢いづく」と期待する。

 高校入学時、安楽は上甲監督と3つ約束した。高校生のうちに160キロを出す。全国制覇。ドラフト1位でプロに行く。花巻東時代に岩手大会で160キロをマークした大谷翔平(日本ハム)が、今年の6月18日阪神戦で160キロを出した。甲子園での日本人最速だ。「大谷さんは、本当にすごい。自分は、チームが苦しんでいるときにチームを救う1球を投げたい」。剛球の魔力を安楽は信じる。

 右肘故障という悔しい経験も「投げられないときに、走り込みとウエートトレは日本一と自信を持って言えるくらいやりました」。200メートルダッシュを50本繰り返し、ゴルフ場を走り込んだ。負傷から復活後、まだ球速は140キロ台後半だが、体力強化をプラスにつなげる自信はある。味方にも相手にも「剛腕健在」を知らしめる、流れを変える1球こそ、安楽の誇り。勇気をふるう夏になる。【堀まどか】

 ◆安楽智大(あんらく・ともひろ)1996年(平8)11月4日、愛媛・松山市生まれ。父の転勤で高知に引っ越し、高須小2年から軟式野球チーム「高須ザイオン」で投手として野球を始める。松山に戻り、道後小3年から「東雲イーグルス」、道後中では「松山クラブボーイズ」に所属した。済美では1年秋から背番号1。高校日本代表を務めた昨年9月のU18W杯(台湾)でベネズエラ、キューバを無四球完封し、準優勝に貢献。188センチ、88キロ。右投げ左打ち。