甲子園から、数々の伝説を生んだ延長戦の熱戦が消えてしまうのか…。日本高校野球連盟が春夏の甲子園大会で、延長戦で塁上に走者を置いた状態で始める「タイブレーク方式」の導入を本格的に議論するために、4030すべての加盟校対象のアンケートを行うことが13日、分かった。試合の早期決着を図ることで、選手の健康管理につなげるのが狙い。今月10日付で各都道府県高野連に送付しており、現場の多くの指導者から支持を得られれば、最短で来夏から導入されることになる。

 加盟校へのアンケートでは、甲子園大会や夏の地方大会で健康管理上、導入すべきものについて質問している。投球数の制限、投球回数の制限、タイブレークの導入を挙げて意見を求め、タイブレークを採用した場合はどの回から始めるのが適切かも問うている。

 甲子園大会では選手の体調を考慮し、昨夏から準々決勝翌日に休養日を設定した。しかし、今春センバツ2回戦の広島新庄-桐生第一(群馬)が延長15回引き分け再試合となり、当初の日程から2日順延したことで休養日が消滅。いずれかのチームが決勝まで勝ち上がると5連戦の過密日程となったことから、対策を思案していた。

 日本高野連・竹中雅彦事務局長は「休養日を設けていたのに、天候の影響で飛んでしまった。健康管理を一番重視していたのに、いかがなものかという声があった」と説明。さらに「世界の流れがタイブレーク導入になっている。WBC、五輪もそう。高校野球だけ無関心でいいのかと、議論してみようとなりました」と続けた。

 甲子園の延長戦は、数々のドラマを生んできた。松坂(メッツ)を擁した98年に春夏連覇した横浜(神奈川)は、準々決勝のPL学園(大阪)戦で延長17回の熱戦を制した。「佑ちゃんVSマー君」の投げ合いとなった06年夏の決勝は、早実(西東京)-駒大苫小牧(南北海道)が延長15回引き分け再試合となり、早実が優勝。日本ハム斎藤、ヤンキース田中のライバル物語に、日本中が沸いた。

 だが一方で、昨春センバツで済美(愛媛)安楽智大投手(3年)が、3日連投を含めて5試合772球を投げたことに、米国メディアなどがこぞって批判。「投げ過ぎ論争」がわき起こった。安楽が昨年9月に右肘を痛めたことで、選手の健康管理に対する議論は、さらに活発になった。

 タイブレークは、すでに国体や明治神宮大会で取り入れられており、今年から春秋の地区大会や都道府県大会でも採用できるようになった。日本高野連・竹中事務局長は「あくまで現場ありきなので、反対が多ければ導入はできないですし、歓迎の声が多ければ検討していきます」と説明。アンケート結果は8月末までに集計し、最終的には11月の理事長会議で方向性を決定する。賛成が多ければ、最短で来夏からの導入となり、甲子園大会前の各都道府県大会から実施することになる。

 ◆タイブレーク

 延長回で得点を入れやすくするため、1死満塁や無死一、二塁などから攻撃を開始する規定。日本の野球でいち早く採用したのは03年の社会人野球。五輪では08年北京から、WBCでは09年の第2回から、大学野球では11年の全日本大学選手権から採用された。高校野球では11年の明治神宮大会で10回以降1死満塁で初採用。国体高校野球では13年から、春季高校野球では今年から関東、北信越大会で採用されている。U18の世界選手権では無死一、二塁から攻撃を開始する。