<高校野球奈良大会:智弁学園8-6天理>◇28日◇決勝◇佐藤薬品スタジアム

 智弁学園のスラッガー、岡本和真内野手(3年)が、特大アーチで3年ぶり17度目の甲子園出場を決めた。5回、高校通算73号となる2ランを放った。今大会は通算打率5割5分6厘、3本塁打、14打点の好結果。プロから「1軍の中軸を打てる選手」と太鼓判を押された次代の和製大砲が、自身初の夏の聖地に乗り込む。

 奈良の怪物は、負けなかった。初戦から決勝まで休むことなく打ち続け、岡本が自身初の夏の全国切符を手にした。「うれしいです。甲子園といえばやっぱり夏。最後の力を出し切れる場所だと思います」。日に焼けた頬を、うれし涙が何度も伝った。

 5-0の5回無死一塁で、カウント1-1からの真ん中スライダーを左翼へ。高校73号は、外野芝生席後方の防御柵でようやく止まった“場外弾”。リードを7点に広げた中押し弾は、天理の6点奪取で、終わってみれば勝負を分ける1発になった。「あの打席も、4番の吉岡につなごうと思って打ちました。後ろにつなぐ意識。それだけは何があっても変わらない。僕がどのステージに行っても、同じです」と言い切った。

 プロから「将来は1軍で中軸を打てる」と期待され、この日も5球団が視察。どれほど周囲から「怪物スラッガー」と特別視されても、自身を特化することはない。「チームのために打つから凡フライも野手の間に落ちるヒットになってくれる」。仲間の役に立ちたいと、ボール球を振る悪癖も克服した。

 自宅に戻れば祖母和嘉子さん(72)の部屋でその日の出来事を話し続ける岡本が、この夏は大好きなおばあちゃんと距離を置いた。大会前の腰痛の影響で、結果こそ出ていたが2、3回戦は本調子ではなかった。ビデオと向き合い打撃フォームの確認、修正を続けた。孫のひたむきな横顔を見守ってきた和嘉子さんは「それだけみんなのために打ちたかったんでしょう」と孫の思いをくんでいた。

 夏の切符をつかみ、甲子園の目標をまずは4強超えに定める。小坂将商監督(37)の3年夏、95年超えだ。そこまで行けば、秋の長崎国体出場が確定する。「みんなと秋まで野球をやりたいし、いつもお世話になっている部長の井元先生が坂本龍馬を大好きで『ゆかりのある長崎に行きたいな』と言われましたから」。優しさも力に変えて、打の怪物が甲子園に乗り込む。【堀まどか】

 ◆岡本和真(おかもと・かずま)1996年(平8)6月30日、奈良・五條市生まれ。北宇智小1年から投手兼内野手として野球を始める。五條東中では「橿原磯城シニア」で投手兼三塁手。智弁学園では1年春からベンチ入り。50メートル6秒8。遠投100メートル。183センチ、95キロ。右投げ右打ち。

 ◆智弁学園

 1965年(昭40)創立。生徒数は636人(うち女子は258人)。野球部も同年創部。部員は46人。甲子園は夏が17回目、春は9回出場。主なOBは枡田慎太郎(楽天)岡崎太一(阪神)加地前竜一(巨人)ら。所在地は奈良県五條市野原中4の1の51。中川敏男校長。◆Vへの足跡◆2回戦8-1平城3回戦6-1奈良高専準々決勝15-0登美ケ丘準決勝11-6大和広陵決勝8-6天理