<高校野球長崎大会:海星7-4創成館>◇30日◇決勝◇長崎県営

 長崎から甲子園のスター候補が現れた。海星が創成館に打ち勝ち、3年ぶり17度目の夏優勝を飾った。海星の2年生4番・平湯蒼藍(ひらゆ・そら)内野手が勝ち越し2点適時二塁打、ダメ押しソロ本塁打と2安打3打点の活躍。中学時代リトルシニアの日本代表で4番を打った左の長距離砲はこの日で高校通算19本塁打。その強打で甲子園でも暴れまくる。

 最後はあっけなかった。海星3点リードの9回の守り。1死一、二塁のピンチで快音を残した遊直に相手二塁走者が飛び出し、二塁転送併殺で終了。1テンポ遅れてマウンド上に歓喜の輪ができた。

 「最高です!」。4番平湯はマイクに向かって叫んだ。同点の5回、無死二、三塁から低めのスライダーを振り切り、右翼線へ勝ち越し2点適時打。「最終回の守りが苦しくなると思ったので、あと1点欲しかった」。9回にはカーブを右中間スタンドへソロ本塁打をたたき込んだ。今大会、腰痛に悩まされ続けたが、2打席とも狙いを定め一発で仕留めて甲子園に導いた。

 家族の思いを胸に大舞台へ向かう。父隆之さん(40)は中堅手として90年夏に、兄翔太さん(20)は捕手として11年夏に同じく海星で甲子園に出場。いずれも初戦敗退し、3年前の兄の悔しい姿はアルプス席から目に焼き付けていた。

 左の長距離砲は海星中時代、リトルシニアの日本代表に選ばれ4番を打った実力で、横浜、智弁和歌山、大阪桐蔭などから声をかけられたが、海星を選んだ。「父も兄も勝てていないので、校歌を歌いたい。長打力を生かして出るからには甲子園でも優勝目指して頑張りたい」と意気込んだ。

 海星を選んだのは仲間の存在もある。この日スタメンの高山凌内野手(2年)、桑原唯偉人捕手(2年)、服部貫大外野手(1年)はいずれも海星中からプレーしている。スタメンの3年は2人だけ。伸びしろ十分な若いチームだ。

 加藤慶二監督(40)が冬場に3年と2年を分けて紅白戦を毎週行った。10戦ほど行わせ、2年生には責任感を、3年生には危機感を覚えさせた。お互いの力が分かりチームは1つとなった。海星は76年、酒井圭一(56=現ヤクルトスカウト)を擁して4強入りが過去最高。平湯を軸とした破壊力で、4強だけでなく長崎県初の夏全国制覇を目指す。【石橋隆雄】

 ◆平湯蒼藍(ひらゆ・そら)1997年(平9)6月21日、長崎市生まれ。橘小1年から東長崎イーグルスで、軟式野球をはじめる。ポジションは遊撃手。海星中では硬式の長崎海星リトルシニアに所属。2年秋と3年夏に全国大会出場。中3年夏にはシニア日本代表18人に選ばれ4番を打つ。米国で10カ国と試合を行いチームトップの打率5割6分4厘。海星では1年秋からレギュラー。両親と兄、妹の3人きょうだい。右投げ左打ち。178センチ、82キロ。

 ◆海星

 1892年(明25)に男子校として創立の私立校。2006年から男女共学。生徒数は1225人(女子342人)。野球部は1915年に創部された。現在部員は88人。甲子園は春4度、夏は17度目の出場となる。甲子園最高成績は76年夏の4強。主なOBに酒井圭一(元ヤクルト)、平田勝男(元阪神)らがいる。長崎市東山手町5の3。清水政幸校長。◆Vへの足跡◆2回戦2-1壱岐3回戦8-3西陵準々決勝8-1小浜準決勝5-2長崎商決勝7-4創成館