<センバツ高校野球:花巻東5-2利府>◇1日◇準決勝

 胸を張れ、君たちは21世紀の星だ!

 利府(宮城)が花巻東(岩手)に敗れ、惜しくも決勝進出を逃した。3回に遠藤聖拓(3年)の2ランで先制したが後半、逆転された。打線は花巻東のエース菊池雄星(3年)に5安打に抑えられ「みちのく対決」で敗退。だが21世紀枠で初出場の公立校は、次々と名門校を破ってベスト4進出と大健闘。甲子園のスタンドから大きな拍手が贈られた。

 利府ベンチ、応援席から大歓声がとどろいた。3回裏1死二塁。1番主将の遠藤が花巻東・菊池の速球をはじき返すと、打球は右中間スタンドに舞い落ちた。チーム一の強打者の1発で2点先制という、願ってもない展開になった。

 だが後半、ムードは一変する。連投のエース塚本峻大(3年)は疲れが目立ち3失点。6回2死から救援の高橋拳嗣(3年)も精彩を欠き、8回にダメ押しの2点を奪われた。打線は菊池に抑え込まれた。21世紀枠史上初の決勝進出まで、あと1勝と快進撃を続けてきた利府が、力尽きた。

 それでも、小原仁史監督(46)は「心身ともにナインは疲れていたが、よく頑張った」と、ねぎらった。「甲子園に来ていろんなことがあった。教えてもらい育ててもらった。お土産をいっぱい持ち帰ります」とも話した。帰れば新入部員も加えて再スタート。貴重な経験を今後の糧にする。

 腕も上がらない状態だった塚本だが「疲れとかはない。もうちょっと投げたかった。でも悔いはありません」という。相手の打ち損じを誘う、巧みな投球。変化球と制球は衰えなかったが、配球全体を生かすストレートの伸びを欠いたのが響いた。

 ナインは試合終了時、花巻東ナインと握手し抱き合った。「頑張れよ!」の声も掛けた。小原監督は「うちは、たまたまここまで来たが、花巻東さんには明日勝って、優勝旗を東北に持ち帰ってほしい」とエールを送った。無欲で挑戦し続けた利府が、大きな足跡を残して甲子園を後にした。【北村宏平】