<全国高校野球選手権:常葉学園菊川11-9倉敷商>◇13日◇3回戦

 大逆転だ!

 常葉学園菊川が6点差をひっくり返した。11-9で倉敷商(岡山)を下し、2年連続の8強入り。静岡県勢の夏通算80勝を達成した。先発の萩原大起投手(2年)が3回途中6失点KOも、5回裏に5番伊藤慎悟中堅手(3年)の逆転3ラン本塁打が飛び出し、7本の長短打で7点を挙げ逆転に成功した。7-7で迎えた8回裏には、6番上嶋健司一塁手(3年)が勝ち越し左越え二塁打を放った。

 歴史は繰り返した。6点差の大逆転劇。84年夏の1回戦(対智弁学園)、浜松商の左翼手として7点差逆転を経験している佐野心監督(41)は「0-6でもあきらめる雰囲気は全くなかった。初戦と違い、素晴らしい打撃をした。選手に感謝したい。5回には『絆(きずな)だよ絆』と言いました」。打者11人、怒とうの5連打を含む7安打集中で一気に7点を奪った。伊藤は昨夏と同じ3回戦で、同じく左翼へ3ラン本塁打を放った。2年連続の神懸かり的活躍に「みんなにミラクル、ミラクルと言われました」と照れた。

 投手陣の窮地を救うべく、野手が一丸となった。6番上嶋は4打数4安打。5回に中前打で猛攻の口火を切れば、8回無死二塁では勝ち越しの左越え二塁打を放った。「初球から積極的に振ろうと、試合前からみんなで言っていた。最初は沈んでいたけど、最後は押せ押せムードになった。戸狩(聡希=3年)が投げられないと聞いていた。この前は投手で勝ったので、今度は打撃で勝とうと言っていた」。初戦(対福知山成美)はチーム全体3安打に終わったが、この日は4倍以上の13安打を放った。8回にも4点を奪い、静岡大会初戦(対聖隷クリストファー)以来7試合ぶりの2ケタ得点を挙げた。

 左ひじ痛のエース戸狩は、登板不可能だった。先発は甲子園初登板の萩原。直球は最速139キロを記録しながらも、制球が定まらない。初回、4安打1四球、連続スクイズで5失点した。3回表、さらに1点を失ったところで、野島大介投手(3年)と交代した。野島は「萩原は(夏)初先発で厳しくなると思って、先発と同じ準備をしていた。あのまま負けたら萩原も後を引く。気合が入りました」。母裕子さん(41)によると、幼少期からけんか1つしなかった心優しき右腕。投げたくても投げられない戸狩、結果の出なかった萩原の思いを背負い、投げた。4つの見逃し三振を奪う抜群の制球力で6回1/3を5安打3失点。自責点1の好投が、味方の反撃を呼び込んだ。

 9回表、伝令として戸狩がマウンドに向かった。全員が帽子を取り、合言葉の「絆」を確認した。「ブルペンでは100キロも出なかった。今日は勝利をプレゼントしてもらった。返します。もう、100キロでも全部いきます」と戸狩。仲間にもらった1勝に、今後の奮闘を誓っていた。【斎藤直樹】