<高校野球静岡大会>◇24日◇準々決勝

 4強が決まった。静高の4番!

 拓真がたくましい!!

 静岡が浜松商との名門対決を7-3で制し、2年ぶりに4強入りした。4番小川拓真一塁手(2年)が初回の2点タイムリー二塁打を含む4安打4打点と大暴れ。第1シードの貫禄(かんろく)を示し、25日の準決勝は、昨夏1回戦でコールド負けした常葉学園橘と対戦する。

 静高の4番として、先輩と交わした約束を破るわけにはいかなかった。試合前、小川は1番板倉健人主将(3年)に頼んだ。「初回(塁に)出てください。自分が返しますんで」。その板倉が出塁し、1死一、二塁で迎えた初打席。外角高め直球を振り抜いた。左翼線に流した二塁打で走者を一掃した。「相手は初回に点を取って勢いに乗った。だから初回は絶対、先に点を取りたかった」。静高の主砲が、浜松商得意の「先手」を奪った。

 伝統校同士の一戦を前にした23日、小川は栗林俊輔監督(37)から「休め」と言われても、ティー打撃を延々とこなした。4回戦の静岡学園戦(1安打)で、好機に凡退した悔しさがあった。1本では満足できない。3、5回にも板倉がともに三塁に進むと、3回はエンタイトル二塁打、5回は中前打で返した。板倉主将は「有言実行。頼りになる」とたたえた。

 昨秋から4番に座る2年生。秋の県大会、13安打放ちながら8-14で敗れた磐田東戦では5打数無安打だった。そこから自覚が芽生えた。冬、周囲が体をつくるために体重を増やす中で1人、しぼった。好物の鶏の空揚げを我慢し、2、3杯食べる丼も少しにした。88キロあった体重は80キロに減り「体が軽くなった」。今大会打率5割5分6厘をはじき出す、鋭いスイングを生んだ。

 エース河村謙太投手(3年)が4試合連続2ケタ安打中だった浜商を5安打に封じ、バックも小林祐貴右翼手(3年)らがダイビング捕球を見せるなど、過去3試合から一転してかみあった。上り調子で迎える準決勝は昨夏、56年ぶりに1回戦敗退を味わわされた常葉橘。小川は「4番を打たせてもらえる喜びを感じながらやりたい」と気負いなく、風格を漂わせた。【今村健人】