<高校野球和歌山大会>◇27日◇決勝

 待ってろ、島袋!

 智弁和歌山が6年連続で夏の甲子園切符を手にした。同じくセンバツ出場校の向陽を相手に高嶋仁監督(64)は初回から大胆な継投策を敢行し、6-3で逃げ切りに成功。今大会では実に7投手を使い分け、センバツ2回戦で敗れた興南(沖縄)へのリベンジの思いを結実させた。史上最多の甲子園通算59勝を誇る同監督は前人未到の60勝への挑戦権も得た。

 場内は一瞬目を疑い、ざわついた。2-0で迎えた初回。先発の1年生・蔭地野(おおじの)正起が2死二塁とされた場面で、一塁側ブルペンから左腕青木勇人(2年)が走ってきた。まだ6球を投げたところで高嶋監督が動いた。

 「球が高かった。甲子園がかかった独特の雰囲気だし、点を取られる前に早めに代えました」。知将は涼しい顔で言ったが、見ている者には疑問符しか付けられない選択だ。ここまで主戦格で投げてきた蔭地野をあきらめ、逆に送り込んだのは前日26日が今大会初登板で1回2失点、大会前から絶不調だった左腕だ。

 狙いは当たる。青木は4番西山克哉内野手(3年)を空振り三振に仕留めてピンチ脱出。そこから調子を上げリードを保って7回にバトンを渡した。自らのバットで適時打2本の“副産物”までもたらした。

 調子の上がらない青木に同監督は「準決勝、決勝に合わせておけ」と言って大会序盤はベンチに置いた。そして今の状態を冷静に見極めて一番の勝負どころで投入。試合開始と同時に準備していた青木は「あんなに早いとは思わなかったけど、気持ちで投げました」と笑った。

 今大会で7投手を起用するなど総力戦で6年連続で甲子園に導いた高嶋監督は「興南にリベンジできるのはウチしかない。負けられなかった」と力を込めた。今年のセンバツ2回戦で2-7と敗北。優勝した興南に負けた他の4校は今夏、すべて敗退していた。

 ナインも春以降、打倒島袋を旗印に伝統の猛練習に耐え、課題だったバントなど繊細なプレーを磨いてきた。3回戦では笠田に延長サヨナラ勝ちなど苦しみ抜いての県突破。高嶋監督は「まだ半分も調子が上がってきていない」と甲子園での躍進を虎視眈々(たんたん)と狙っている。【柏原誠】