外角へ逃げていくスライダーだ。決して簡単なボールではない。広島新井貴浩内野手(40)は体を投げ出すようにバットを出し、先っぽで乗せた。打球は中前ではずみ、二塁から丸が生還した。一塁上で見届けた新井は何度も手をたたき、同点適時打を喜んだ。「あまり強引にならないように、センターを中心に打ち返そうと思った」。前夜は今季ワーストの13失点で大敗。まさにチーム全員で、再スタートを切った。

 試合開始時点では新井はベンチにいた。「5番一塁」でスタメン出場したのは松山。だが第1打席で右肩付近の違和感を訴え横浜市内の病院に向かった。代役に指名された新井は「準備は出来ていた」。今季は守備固めをこなすことも少なくない。平常運転で試合に入った。「新井コール」を最後の集中力のスイッチとし、打席に入っていた。

 嫌なムードをバットで消し去った。松山だけでなく、三塁を守る安部も腰に違和感を訴えて病院へ。3回の守備から西川に代わった。猛暑と移動が重なり、コンディション万全な選手はいない。リプレー検証や投手交代の際には複数の選手が定位置で座ってストレッチ。ギリギリの状態のなかで戦っていた。

 試合展開も重かった。打線が1点を1回に先制するも、直後の1回に先発薮田が押し出しを含む3失点。打線もボール先行のDeNA井納をなかなかつかまえられなかった。それでも4回に会沢の併殺の間に1点。新井の適時打の後にはこちらも途中出場の西川が犠飛で勝ち越した。

 緒方監督は「こっちもずっと注意しているけど、想定外(アクシデント)は起こりえる。これからもベンチ全員で戦う」と号令を出した。選手層の厚さを見せつけた試合。全員一丸で、今日6日にも優勝へのマジックが点灯する。【池本泰尚】

 ◆広島のマジック 広島○の結果、DeNAの自力Vが消滅。広島は今日にもM34が点灯する。M点灯の条件は、広島がDeNA戦に○か△で、阪神がヤクルト戦に●。デーゲームの阪神が○か△の時点で、M点灯は8日以降に持ち越し。