「さよならプロ野球」のパ・リーグ編は、日本ハム武田久投手(39)が登場する。通算167セーブは球団最多。日本一にも貢献したクローザーは古巣の日本通運にコーチ兼任で復帰し、プロを目指す若者へ勝負へのこだわりを伝授する。

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 日本ハムでの15年間にピリオドを打ち、武田は日本通運への復帰を決めた。「いい集団だけど、何かが足りない」。昨年の日本選手権、今年の都市対抗は準優勝。プロ入り前の2年間を過ごし、オフにはメインの自主トレ場所という愛着のあるチームだが、一方で「弱さ」も感じていた。「いい雰囲気の中にスパイスを入れたいと思った。一発勝負の野球の質だろうね。やるからには、本気で日本一を目指す」と決意した。

 明確なビジョンがある。NPBで築いた実績の押しつけはしない。「まずは話を聞いてあげるのが大事。考えさせることも大事。俺が言うこともあるけど一方通行じゃダメ。そこが選手が成長するかしないか大事なところ」。聞き役に徹しながら、勝利へのこだわりなどを伝授していく。

 日本ハムからは、籍を置いての派遣形式も打診されたが、潔く退路を断った。「プロを離れないと次のステップにいけない。日本ハムの人間じゃ、意味がない」。35歳までは2軍コーチへの憧れもあったが、今は違う。「正直、プロにいる子は放っておいても活躍できる。プロを目指している人を教えたいというのに変わってきた」。

 周囲から新たな道の選択に疑問の声が聞こえてきたが、自分が先達になればいい。「もっと大学とか高校に戻っていく人が増えていけばいい。こういう性格だし1年でクビになる可能性はあるけど、せっかくチャンスをもらったんだから楽しみだよ」。守護神は、舞台を変えても頼もしい姿を見せ続ける。【田中彩友美】