辻監督の完投指令を、西武多和田真三郎投手(25)は平然と受け止めた。81球で7回を終えた後に言われたが「どの試合も完投するつもり。特別、今日だけということはなかったです」。8回、楽天打線に1点を奪われ完封は逃したが、9回は3人でピシャリ。首位を走る投手陣で、最初に完投勝利を挙げた。

 最速146キロは数字以上に切れた。「真っすぐが走ったのが良かった」と、うなずいた。ペゲーロ、アマダーら力自慢が、吹き上がる軌道に差し込まれた。銀次、今江らバットコントロール巧みな打者が打ち損じた。ポップフライや内野ゴロを重ね、8回先頭まで二塁を踏ませなかった。

 キレの証しが右膝とスネについた土だ。プロの平均が6足半といわれる踏み出し幅が7足あまりと突出。土がつくほど踏み込み、より打者に近いところで球を離す。弾道測定器トラックマンでも証明された。ある球団のデータでは、多和田のリリースポイントはプレートから2メートル5センチ前だった。2メートル超えはまれで、12球団トップをたたき出した。

 土肥投手コーチは「前で離すと角度はつかない。何が、その人に合っているかが大事」と解説。多和田は踏み込んで投げられるよう、股関節周りの強化を続ける。前日もブルペンで腰を鋭く回転して腹圧をかけるトレーニング。地道な鍛錬が、7足あまりを支える。

 背番号18のエースナンバーだが、過去2年は7勝、5勝。それが早くも負けなし3勝目で、チームは貯金9。「自分の仕事を一生懸命やってます」と控えめだが、菊池に続く柱になろうとしている。【古川真弥】