阪神がAクラス浮上チャンスを逃した。1点差に迫った3回に先発岩田稔投手(34)の危険球退場から暗転。岡本、岩崎ら中継ぎ陣も失点を重ね、防戦一方の展開になった。今季の退場者は両リーグを通じて11人目だが、そのうち阪神が半分近い5人の“怪”。攻撃陣も終盤追い上げたが8失点は重く、勝てば3位浮上の一戦を落とした。

 あと1本が出なかった。阪神は3点を追う土壇場の9回に執念を見せたが実らなかった。ヤクルト守護神石山の制球難を見極め、2四球などで千載一遇の無死満塁とする。だが、ロサリオが三邪飛に倒れ、鳥谷の二塁併殺打で敗れ去った。

 痛恨の危険球退場が命取りになった。7月24日広島戦以来の先発に抜てきした岩田の乱調が誤算だった。1点差に迫った3回、先頭青木への初球で暗転した。速球は完全に抜けて、頭部付近を襲う。白球はヘルメットをかすめて本塁後方を転々…。青木も倒れ込む。打者に当たったか、微妙な投球だった。梅野は「先にグラブに当たったけど、ヘルメットの音は聞こえなかったです」とアピールしたが、土山球審は「ヘルメットの音が聞こえた」と指摘。危険球による退場と判断された。

 三塁側ベンチからは金本監督が土山球審に歩み寄って、リクエストによるリプレー検証が可能か確認。指揮官は「審判がそうやって危険球と宣告した以上は覆らないということだから。ビデオ判定もない」と説明した。岡本が緊急登板したが、流れを変えられず。2本のタイムリーを浴びて、重すぎる4点を失った。

 ベテラン左腕への期待は大きかったが気合は空回りした。1回は2死後、バレンティンに内角低め速球を痛打され、2ランを被弾。3戦連続の初回失点で、またも後手に回った。金本監督も「インコースに行くなら、高めに行かないとな。バッテリーがインローで勝負というのが分からない。おととしから、ずっと言っている」と苦言を呈した。2回も西浦に甘いスライダーをとらえられ、ソロ本塁打を献上。立て直せず、3回途中で緊急降板となった。

 好調の8月は、打線が活発化する神宮で勢いをつけたいところだったが思惑が外れた。この日は12安打を放ちながら競り負けた。5カードぶりに負け越した。順位は4位のままだが、2位ヤクルトはクライマックスシリーズ進出をかけた宿敵になる。一筋縄でいかない相手に土をつけられた。【酒井俊作】

 ▼阪神岩田がヤクルト戦の3回に危険球で退場となった。退場は今季両リーグ11人目だが、そのうち阪神は5人目で、全退場者のほぼ半分と多い。5人のうち、審判への暴言で退場となったメッセンジャー以外の4人は危険球退場。07年の3人(福原、ジャン、ボーグルソン)を上回る球団シーズン最多となった。