新たなスタートを切る。阪神藤谷洸介投手(22)の打者転向が30日、発表された。

「投手として1軍のマウンドを目指し続けることも考えていましたが、矢野2軍監督にお話をいただいて、自分に少しでも可能性があるのなら、その可能性に挑戦したいと思って打者転向を志願しました」

矢野2軍監督は「本人もいろいろと考えたみたい。元々、体の能力はすごくある。ロングティーでも、もしかしたらチームの中でも一番飛ばす可能性があるぐらい。走るのも速い。(守備位置は)どこでもやる、なんでもやるじゃないと追いつけない」と説明した。

藤谷は昨オフに最愛の伴侶を得たばかり。家族を思っての決断となった。社会人パナソニックに在籍していた3年前、社宅最寄り駅近くの売店で働く祖母「ミッコさん」に孫を紹介され、交際に発展。昨オフに結婚を発表した。「もう1人の野球人生ではなくなったので、頑張っていきます」。生涯の伴侶を得た今季は、投球フォームを一から見直して臨んでいた。

昨オフの結婚を機に、虎風荘を退寮。妻とゆっくりと過ごすはずの休日も、鳴尾浜の室内練習場に一人で訪れ、マシン打撃を行うこともあった。練習中のフリー打撃やロングティーでは頻繁に柵越えを披露。「(打撃練習は)もちろん気分転換ですよ。まだまだピッチャーをやりたいですから」。そう話してはいたが、約1時間の打ち込みでマメがつぶれて手の皮がめくれていた。血のにじむ両手には、野手転向への葛藤もあった。

「投手の経験は、もちろん生きてくると思う。(配球などは)まだ余裕も何もないので、これからです」

最後のマウンドは22日のウエスタン・リーグ広島戦(鳴尾浜)。9回に登板して1イニングを5安打5失点。踏ん切りがついた。

まだ野手用のグラブは持ってはいない。それでも家族のため、自らの新たな可能性にトライすると決めた。明日31日から本格的に野手として練習を積む。目指すべき場所が、甲子園のマウンドからバッターボックスに変わった。【真柴健】

◆藤谷洸介(ふじたに・こうすけ)1996年(平8)2月12日、山口県生まれ。周防大島3年夏の山口県大会1回戦で、右肘骨折のため20球で降板。甲子園出場はなし。社会人パナソニックから16年ドラフト8位で阪神入団。1年目の昨季は2軍で10試合に登板して0勝1敗、防御率5・29。今季は2軍戦登板7試合で0勝0敗。防御率は5・68。1軍戦登板はなかった。194センチ、90キロ。右投げ右打ち。