<阪神1-3ヤクルト>◇30日◇甲子園

ヤクルトがビッグプレーで5連勝を決めた。1点を先制した直後の5回1死満塁、阪神糸原の飛球が中堅左へ。三塁走者は鳥谷。犠飛に十分な当たりだった。

守備陣は目の前のプレーに集中していた。青木-西浦-三塁宮本と素早くつなぎ、二塁走者梅野のタッチアップを阻止。そのプレーを、タッチアップをした三塁走者鳥谷が本塁を通過するまでに完成させた。

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小川監督は「するべきことをした結果。相手の油断もあったかもしれないけど大きい」とたたえた。

この日、61歳の誕生日を迎えた。練習前に報道陣から大好物のあんこのクリームが挟まったケーキとプレゼントが贈られた。抱負を聞かれ「平凡な日々を送りたい。激動はいらないな」と笑った。冗談でなく、人間小川淳司の本心だった。

少年時代の夢は「サラリーマン」。農家に生まれ、両親が朝から晩まで懸命に働く背中を見ながら、感謝の気持ちでいっぱいだった。ただ、1人での夕食の時間だけ、寂しさを覚えた。「サラリーマンになったらみんなでご飯を食べられるかなと思ってね。でも野球にこうやって携わらせてもらっている。不思議だよね」。今季から4年ぶり2度目の監督復帰。本人の思いとは裏腹に、勝負の世界にどっぷりとつかっている。

野球人・小川淳司は激しさを秘めている。「野球は『目標に向かって、達成できるように』と常に思っている。最後のあがきではないが、結果を出せるようにという思いを持った1年にしたい」と強く言った。

最高のバースデー勝利で貯金を2としたが「関係ないよ」と一蹴し「山中に何とか勝ちをつけてあげたかった。ローテで回っていない投手には大きな1勝になる。そういう喜びはあったね」と言った。温和な表情の下に熱を潜ませて。セ・リーグの戦いを激しくする。【浜本卓也】