2メートル5センチ。西武多和田真三郎投手(25)のリリースポイントのプレートからの距離だ。他球団が入手したトラックマンのデータによるもので、打者にどれだけ近い距離で投げられるかを示す。「エクステンション」といわれ、多和田は12球団トップクラス。平均6足半の踏み出し幅が、多和田は7足あまり。グッと押し込んで投げる独特のフォームを生む。だが、この4試合、その数値が恐らく2メートル3~4センチに減っていた。

土肥投手コーチは「映像で見比べても同じなんだけど、最後の一押しが弱い感じがする。1、2センチの差だろう」と分析していた。5試合前にさかのぼる。8月7日のオリックス戦。完封ペースだったが、8回にバットにつまずき右足首をひねり降板。大事には至らなかったが、次戦からは直球の球威が落ちた。投球は右足でマウンドを蹴って、リリースする指先に力を伝える。同コーチは「足首の痛みは消えても、脳が無意識にかばってストップをかけているのかも」と考えた。

この日に向け、右足首を意識的にグッと押し込んで投げる練習を課した。“無意識”を意識させることでフォームの狂いを修正。初回、オリックス先頭の宗に初球を打たれたが、多和田は「初めから変化球がうまく投げられていた。直球も手応えがあった」と動じない。後続を難なく切った。この4試合中3試合で、初回に失点していたが、鬼門を突破。最後まで0を並べ、完封でリーグ単独トップ14勝目を挙げた。【古川真弥】