ヤクルト星は堂々と右腕を振った。0-1の6回2死一塁、打者は坂本勇。カウント2-1からフォークで早めの勝負に出た。直球と同じ強さで振り下ろし、タイミングを外して右飛に仕留めた。6回2安打1失点で7回に代打を送られたが、打線が逆転に成功。昨年8月17日巨人戦以来の先発白星に「野手の方に感謝しかないです」とほおを緩めた。

プロ入り後はアップダウンの激しい日々を送る。1年目から開幕1軍入りを果たすと、シーズン途中から先発陣の一角を担って24試合4勝7敗のスタートを切った。だが右肘が疲労骨折と悲鳴を上げて暗転した。10月に手術。投げられない苦しみに耐えて毎日を過ごし、並々ならぬ決意で先発マウンドに戻ってきた。

ずぶとさが平常心を生んだ。「緊張ってしたことがないです」。宇都宮工高3年夏の栃木県大会決勝も、プロ初登板も、迷いなく腕を振れた。唯一、硬くなったのは「妻の実家に、あいさつに行った時ぐらい」と笑える強心臓で、3位巨人とのしのぎ合いを制した。「リハビリはきつかったけど1軍で投げることを考えて取り組んできた。うれしいです」。頼もしい右腕が戻ってきた。【浜本卓也】