富士大(岩手)が7-0の7回コールドで青森大に勝ち、33度目の優勝で史上初の10連覇を達成した。主将の楠研次郎外野手(4年=東海大相模)は、3回裏に左中間適時二塁打を放ち、リーグ史上2人目の通算100安打を達成。7回の右越えソロ本塁打を含む3安打の活躍で、首位打者賞を最終戦で逆転受賞しただけでなく、最優秀選手賞、ベストナイン、連盟特別賞も獲得した。27日に開幕する明治神宮大会東北地区代表決定戦(福島・ヨーク開成山)の初戦は、仙台6大学優勝チームと対戦する。

富士大の楠が、史上初10連覇の偉業に花を添えた。3回裏1死三塁、外角高めの直球を左中間に低く鋭い打球。笑顔で二塁到達し、仲間やスタンドの拍手に応えてヘルメットを右手で高々と掲げた。DeNAで活躍した八戸大(現八戸学院大)内藤雄太の118本に続く、史上2人目の大記録。「先輩たちが積み上げてきた10連覇。主将も連覇も100安打も重圧はありましたけれど、北東北が強くなってきた中で、4年間良いものを作れたと思う」。充実の表情で最後のリーグ戦を終えた。

4回には本塁打を確信した当たりが風に戻され、フェンス手前に落ちた。「超手応えが良くて、場外かと思った。ショック」。全力疾走を怠り、単打にしてしまった反省は、次の打席で汚名返上した。6-0の7回に「打ち直しました」と弧を描いた。ホームベース後ろに全員がベンチを飛び出し待ち受ける。“サヨナラ10連覇”を自身の1発で決めた。1死球後に3打数3安打。4割6分2厘で昨秋に続く2度目の首位打者。四死球17も警戒された勲章。7度目のベストナインに加え、初のMVP、連盟特別賞と総なめにした。

今季も順風満帆な道だけではなかった。開幕週でノースアジア大に敗れ、言葉に悩みながら「1敗ならまだいける。春は土壇場で八学に3連勝しただろう」と仲間を鼓舞した。豊田圭史監督(34)の褒めて伸ばす指導法にも感謝。「東都や東京6大学とは違う環境。今の子は褒められて伸びますから。ミスやエラーをして怒られて萎縮するのではなく、言われないぶん自分でいろいろ考えて努力できる。それが富士大の良いところ」と楠は笑う。試行錯誤しながら修正できる自主性が、強さの源であることも証明した。

今春の全日本大学選手権では東北福祉大(仙台6大学)が優勝する一方、初戦敗退の屈辱を味わった。「福祉大さんには流れ、勢いが大事だと勉強させていただいた。でも、うちも流れに乗れればいけるということ。1戦1戦、四球でも死球でもいいから自分もつなぎたい」。神宮切符獲得まで封印した胴上げも、楠が導くつもりだ。【鎌田直秀】